シニアヨガとシニアヨガ資格の価値とは?
日本は世界に先駆けて超高齢化社会を迎えており、高齢者の方はこれからも増えていきます。
個人差はありますが、年齢を重ねることで筋力や体力が落ちていき運動機能が低下して、転倒やケガのリスクが上がります。
運動機能が低下してくると身体を動かすこと自体が億劫になり、気力や気持ちも塞ぎがちに、なってしまいます。
体力の低下や健康、先々の不安を抱える高齢者の方に、私たちヨガインストラクターができることはどんなことなのでしょうか?
「シニアヨガ」とは文字通り、シニア世代の方々に向けたヨガです。「シニア」と言っても年齢の定義はなく、お孫さんがいる方や60歳以上の方、またリタイア後の方を指す場合もあります。
シニアの方の中には日頃から身体を動かしている方もいれば、身体の痛みや不調、病気などの悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
シニアヨガは、お一人お一人の運動能力やその日の体調に合わせて、慢性的な痛みや不調の緩和、運動不足解消、認知症予防など、日常生活をより健やかで快適に過ごすための運動習慣を身につけていただくためのツールの一つです。
加齢によって健康不安を抱える方へ、充実したセカンドライフを送るための身体的サポートや、年齢を重ねることへの不安や孤独感などへのメンタルケアが、シニアヨガインストラクターに求められています。
以下でシニアヨガと、ヨガインストラクターが持っておくとよいシニアヨガ資格を詳しく解説します。
目次
シニア世代が求めるヨガとは?
「QOL(クオリティオブライフ)」という言葉をご存知でしょうか。
QOLとは「生活や人生が豊かで充実しているか」「人間らしく満足しているか」など、生活の質を評価する概念です。
このQOLが高いことが、私たちはもちろん、シニア世代の方々にとっても重要な指標となります。
QOLを高く保つのに大切なのは、自分で身の回りのことができ、社会や人との関わりがあり、生活に充実感ややりがいを感じられていることです。
そのための基盤として、筋力や代謝の衰え、認知機能の低下などを防ぐこと、より健やかに日常生活を過ごすために前向きな気持ちで取り組む気力を養うことが重要になってきます。
ヨガには、自分の体重を支える筋肉を鍛えることで体力や基礎代謝をUPしたり、肩凝りや腰痛などの慢性的な不調が緩和される効果が期待できます。
また、ヨガの呼吸法はリラックス効果が高く、自律神経のバランスを整えることはもちろん、睡眠の質が上がるなどの効果があり、シニア世代の方々にも大いに役立つツールとなるでしょう。
私たちヨガインストラクターにできることは、正しいポーズの取り方や呼吸法を教えることだけではありません。
運動をする機会がなかなかない方、ヨガのことをよく知らない方やヨガを諦めてしまった方に身体を動かすことの大切さや楽しさを伝えたり、シニアの方の話を聞いてコミュニケーションを取り優しく寄り添いながら、イキイキと快適な日常を過ごせるようにサポートすることもシニアヨガの大きな意義になります。
ヨガの心身へのアプローチやインストラクターとしてのサポートが、怪我や病気の予防、認知症予防やメンタルケアなどとともに、社会貢献にも繋がるのではないでしょうか。
シニアヨガの特徴と効果
シニアヨガは通常のヨガとどのような違い、効果があるのでしょうか。
椅子やブランケットなどプロップスを使ってゆっくり動く
シニアヨガでは、通常のヨガで使うブロックやベルト、ブランケットなどのプロップスだけでなく、椅子や壁、タオルなどのサポートをできる限り利用しながら動いていきます。
また連続してポーズを取るのではなく、一つ一つの動きを丁寧にゆっくりと行っていきます。
ポーズよりも安全に楽しめることが大切
ポーズを取る時に転倒したり身体を痛めてしまったりすることがないように、安全であることが第一です。またポーズの完成形を目的にするのではなく、身体が伸びている心地よさや呼吸の気持ち良さを大切にします。
慢性的な不調が和らぎ、身体を動かす楽しさや、身体が快適に動く喜びを感じてもらうことはインストラクターのやりがいにも繋がるでしょう。
シニアヨガの効果
ゆっくりとした動き、軽減したポーズを組み込んでいるシニアヨガには様々な効果が期待できます。
筋力アップと血流アップ
シニアヨガでは、緩やかに動きながら普段使いにくい下半身やお腹の筋肉を活性化するので、日常生活で必要な筋力がアップし、定期的に行うことで体力もついていきます。
また身体をほぐす動きが多いので全身の血流が上がり、身体の凝りやこわばり、不快感が軽減されます。
気分転換とリラックス効果
ゆったりとした呼吸を行いながらご自身の身体に意識を向けることで自律神経が整い、精神的な落ち着きや穏やかな気持ちを得られるでしょう。
シニアヨガのクラスの中で人と話したり交流が広がることで、気分転換やリフレッシュに繋がります。
脳の活性化
腹式呼吸を意識しながら、普段使わない身体の一部分を意識したり、手足や身体を使ってゆっくりと動かしたりしていくので、脳が活性化して認知機能の改善に効果的です。
体操をするだけでも不調は改善できますが、ポーズだけでなく呼吸法や瞑想を取り入れたヨガはシニアの方の体と心に優しくアプローチし、心身共に健康で、ハツラツとした気持ちやポジティブな効果を得られるでしょう。
シニアヨガとは通常のヨガとどう違う?
では通常のヨガとシニアヨガ、動きはどのように違うのでしょうか。実際の動画でどんな動きを取り入れられているのか見ていきましょう。
こちらは日本最大級のヨガ動画、Yogalogのシニアヨガです。寝ころんだままで出来る動きが紹介されています。
筋調整ヨガで有名な中井まゆみ先生のシニアヨガです。立った状態から座って行える動きまである16分の動画です。
町内会で行われたシニアヨガのクラスです。シニアの方々が話をしながら楽しそうに動かれているのが良く分かる動画ですね。
シニアヨガインストラクターのエッセンスとやりがい
様々な不調を理解した安全なレッスン
シニアヨガで何よりも気を付けたいことは、生徒さんの体調を聞き取り、動いている時も表情や顔色などの様子を見ることです。
若い頃のように身体が動かず、昔のように頑張ってしまうとケガにつながる可能性もあります。レッスン前の声かけやサポート、プロップスの使い方も常に伝えるようにしましょう。
また血圧が高い方や血圧計を持っているという方には、レッスン前に測ってきてもらうようにします。
ゆっくり動くだけでもスッキリしてもらえますが、やはり適度な筋肉を使うことも大事です。元気な時には少しチャレンジして、できる範囲で頑張ってもらうよう声をかけながら進めていきましょう。
聞き取りやすい言葉遣いと寄り添う気持ち
レッスンでは、聞き取りやすく分かりやすい言葉を使うようにします。シニアの方の中には耳が遠い方もいらっしゃるので、普段よりも意識してゆっくり話すことが大切です。
また身体が硬いことへの不安や、プライドを持っている方、ヨガをすることに自信がないなど様々な気持ちを抱えていることも。
否定したり、無理やり頑張ってもらったりせず、楽しくポジティブな気持ちで取り組んでもらえるように言葉を選ぶようにします。
豊富な人生経験を積まれてきたシニアの方には、沢山話をしたい方や自分のペースで動きたい方、あまり話をされない方など様々です。お一人お一人の気持ちに寄り添い、どの方にも優しく丁寧に接することが、シニアの方の心身のサポートにも繋がります。
身体を動かす楽しさや喜びを身近で感じられる
年齢に関係なく、初めてヨガを体験する時は不安なものです。
シニアの方の中には、昔のように身体が動かなくなった、身体が硬くなってきたなど消極的な気持ちからスタートする方もいらっしゃいます。
ヨガを続けることで少しずつ身体が柔らかくなったり、身体を動かすことが楽しくなってきたりなど、身体の変化に喜びを感じられる方も沢山いらっしゃいます。
楽しくヨガをされるシニアの方を身近で感じられることは、インストラクターとして大きなやりがいではないでしょうか。
また身体の変化だけでなく、前向きな気持ちを取り戻されたり、イキイキとしたシニアの方の姿にインストラクターが励まされたり、元気をもらうことも少なくありません。
シニアヨガを学んでインストラクタースキルをレベルアップ!
ヨガインストラクターの中には、幅広い年齢層の方が参加するクラスを受け持っているという方も多いでしょう。
参加される生徒さんに合わせて、クラスの内容や運動強度、スピード感などを変えていく必要があるため、クラスの構成に悩まれているという方も。
シニアヨガを学ぶことで、身体の痛みや怪我を抱えている生徒さんにも個別に対応する力や応用力を身につけることができるので、シニア世代の方々だけでなく、様々な年代の方に寄り添ったクラス作りに大いに役立ちます。
また、シニアヨガ指導者養成講座を修了すると、ヨガスタジオやフィットネスクラブだけでなく、高齢者施設や介護福祉施設、緩和ケアを目的とした医療施設、高齢者のためのイベントやサークルなど、様々な場所でのヨガ指導ができるようになります。
最近では、ヨガスタジオを経営する大手企業が機能訓練デイサービスを運営するなど、高齢者のための介護予防事業に参入しているスタジオもあります。
ホットヨガスタジオを経営する企業による機能訓練専門デイサービス。椅子ヨガや安定して歩くための筋力・バランス向上のための運動の提供など、高齢者に向けての運動指導の仕事があります。
また、市や自治体が主催する高齢者のための運動教室にもヨガが取り入れられています。
シニアヨガの資格を取得することで、高齢者のためのヨガサークルや教室を主宰するなどもできるので、資格取得後の行動次第で仕事の幅はさらに増えるでしょう。
シニアヨガを学ぼう!-シニアヨガ指導者養成講座のご紹介-
シニアヨガ指導者養成講座は統一された基準はなく、様々なヨガスタジオで開講されています。
シニアヨガは1日~4日程度で取得できる短期間の講座が多く、最近ではオンラインでの資格取得が可能な講座も増えています。
短期間で身に付けられる資格ではありますが、シニアヨガは単に資格取得という目的ではなく、実際のヨガクラスに活かしてこそ役に立ちます。
そしてシニアヨガには、お一人お一人の身体の状態に合わせた適切な指導や、高齢者の方の気持ちに寄り添う気持ちや思いやりを持つことが大切です。
シニアヨガ指導者養成講座にはヨガインストラクターだけでなく、スポーツ関連の運動指導者、パーソナルトレーナー、介護などの仕事に携わる方も多数参加されています。
身体に携わる様々な業種の方と交流ができることも、インストラクターの活動の幅を広げる良い機会となるかもしれません。
ではここからはシニアヨガ指導者養成講座をご紹介します。(2023年7月現在の情報となります。受講希望の方は各社ホームページにて詳細などをご確認ください。)
MAJOLI シニアヨガ指導者養成講座
・場所:オンライン開催
・所要時間:5日間
・受講費用:キャンペーン98,000円
一般社団法人 日本ヨガメディカル協会 シニアヨガ指導者養成講座
・場所:オンライン開催
・所要時間:1日間(6時間)
・受講対象者:ヨガインストラクターの他、病院や介護施設などで勤務されている方、セラピスト、高齢者と接する機会がある方など、ヨガの指導経験は必要ありません。
・受講費用:29,700円(税込)
→https://yoga-medical.org/learning/4891/
ヨガ ヴィオラトリコロール シニアヨガ(高齢者向け)インストラクター資格コース
・場所:大阪、東京、オンライン開催
・所要時間:3日間(20時間・大阪、東京開催の場合)オンライン開催は5日~9日間など
・受講対象者:ヨガインストラクターの他、介護職、理学療法士の方、家族の介護やイベント、サークル活動のために取り入れたい方など、初心者も受講可能。
・受講費用:大阪・オンライン開催料金69,410円(税込)
→https://yoga-viola.net/yogacourse/senior/
ヨガジェネレーション シニアヨガ指導者養成講座(4日間)
・場所:現在はオンライン開催(内田かつのり先生)
・所要時間:3日間
・受講対象者:ヨガを練習されている方、ヨガ解剖学に興味のある方、介護・看護職の方、シニア向けのヨガに興味がある方、予防医療としてのヨガに興味がある方など、初心者も受講可能。
・受講費用:101,200円(税込)
→https://shop.yoga-gene.com/program/684/
シニア世代だけでなくビジネスワーカーにもおススメ!-チェアヨガ指導者養成講座のご紹介-
シニアヨガと合わせて紹介したいのが「チェアヨガ」。シニア世代の方だけでなく、身体を動かす時間がなかなか取れない方やビジネスワーカーの方にも取り組みやすい、スキマ時間を使ってできる椅子を使ったヨガです。
シニアの方にとって、床から立つ、立った姿勢から床に座るという動作がつらく感じる場合が多く、さらに車いすでの生活をされている方にとっても、床に座ること自体が難しくヨガを諦めたという方もいらっしゃいます。
また、パソコン作業などのデスクワークが多い方にとって、肩こり、首こり、腰痛などの慢性的な不調を抱えている方も少なくありません。
チェアヨガはほぐすことをメインにした動きが多いですが、肩凝りや腰痛の軽減、むくみの解消、リフレッシュ効果などヨガと同様の効果が期待できるので、人気が高まっています。
仕事の休憩時間や短時間で取り組めることから、オフィスや介護施設、高齢者施設などへの出張ヨガも増えています。
チェアヨガの資格を身に付けられれば、ヨガスタジオの枠を越えた幅広い活動の可能性が広がるでしょう。
ではここからは、チェアヨガ指導者養成講座をご紹介します。(2020年9月現在の情報となります。受講希望の方は各社ホームページにて詳細などをご確認ください。)
一般社団法人 グラヴィティヨガ協会 椅子ヨガ指導者養成講座
・場所:大阪、東京開催
・所要時間:4日間
・受講対象者:ヨガインストラクターの他、運動指導者、インストラクターの方、学校や会社、イベントにて開催したい方、介護施設など高齢者向けに開催したい方、妊婦さん向けに指導したい方など、初心者も受講可能。
・受講費用:42,900円(税込)
→https://gravity-yoga.jp/instructors/chair
ヨガアカデミー大阪 シニア向けチェアヨガ指導者養成講座:ベーシック2日間
・場所:オンライン開催
・所要時間:
・受講対象者:ヨガインストラクターの他、ヨガインストラクターを目指している方、家族などにヨガを伝えたい方、介護従事者など。
・受講費用:42,000円(税込)
・ベーシック講座修了後、『介護施設のヨガ指導スキルを身に付ける、チェアヨガ1DAY講座』が受講可能。
→https://www.yoga-academy.jp/program/10796/
ヨガアカデミー大阪 介護施設のヨガ指導スキルを身に付ける、チェアヨガ1DAY講座
・場所:オンライン開催
・所要時間:1日間
・受講対象者:上記チェアヨガ指導者養成講座ベーシック修了者、介護施設の人材不足に対して貢献したい方、チェアヨガクラスを開催したい介護施設の職員の方など。
・受講費用:13,750円(税込)
→https://www.yoga-academy.jp/program/11530/
健康に不安があるシニア世代のためにヨガインストラクターができること
シニアヨガの需要は高くなっており、シニアヨガインストラクター養成講座の種類も年々増えています。
身体の使い方や機能向上のためのストレッチや呼吸法を伝えることだけでなく、シニアの方に寄り添い、思いやりを持った心遣いがシニアヨガインストラクターに必要なエッセンスです。
シニアの方に健康な身体を維持して穏やかで前向きな気持ちを持っていただくことは、ヨガインストラクターとしての大きなやりがいでもあります。
また、元気でイキイキとしたシニアの方が増えることは、超高齢化社会の中の希望にもなるのではないでしょうか。
ヨガインストラクターとして、ヨガを通してシニア世代の方をサポートすることが、明るい未来へと繋がっていきますように。
「眠りのヨガ」ヨガニードラはシニア層にもおすすめ!ヨガニードラについてはこちら。
→【ヨガニードラとは】コロナ禍のnextヨガ! ヨガニードラの方法とクラスへの取り入れ方
シニア向けであれば、椅子を使ったヨガがおすすめ!椅子ヨガの代表的なポーズやスクールをこちらの記事で紹介しています。
→高齢者も安心!椅子ヨガ(チェアヨガ)の資格スクール一覧