たかが坐法、されど坐法。
ヨガを始めるにあたり、ほとんどのクラスが坐法から始まることでしょう。
西洋人と比べるとアジア人(特に日本人)はあぐらや正座などの坐法には風習的にも、体の作りとしても、馴染みがあります。
とはいえ、いざヨガのクラスに行くとインストラクターは、
「足を組んでXXXのポーズ」
「楽な姿勢で座ります」
など当たり前のようにアーサナの名前だけを言うだけ、あるいは非常にシンプルな説明で終わってしまうことが多いと感じることはありませんか?
「正直、ちょっとわかりにくい。」
「わかるけど実際に足が組めない。」
などと意外と「モヤモヤ」したままなことが多いのが、坐法。
今回は3つの坐法についてご説明します。
基本のものから、ちょっと上級編のものまで基本をお伝えいたします。
スカアーサナ(安楽座 / Easy pose / Sukha asana)
坐法の中では一番楽にできるポーズとも言われています。リラックスして座れるようにしましょう。後述する他の坐法などで疲れた時には、このスカアーサナに戻ると良いでしょう。
また他の坐法で安定して座れない場合は、このスカアーサナを基本にします。 安定して座ることは身体だけでなく、精神の安定感やバランスをとることの助けになります。
左右のお尻に均等に体重が乗っているかなど、体の状態を観察するように心がけましょう。
■ 手順
・まず両足を前方に伸ばして、骨盤を立てて座ります。
・片足を内側へ曲げ、足裏をもう一方の足の内腿につけます。
・反対の足も曲げ、足裏をもう一方の腿の下に置きます。
・頭、首、背中を上に引き上げるようにして、腰から頭まで一直線になってるのを意識します。
・手の形(ムドラと呼ぶ)もアーサナの一つとして需要です。親指、人差し指の先をつけて指で丸を作ったら、手のひらを上にします。(チンムドラ)あるいは手の平を下でも良いです。(ジャナムドラ)
・頭、首裏、背筋をまっすぐに上に引き上げるようにしましょう。
■ 注意
スカアーサナは一番楽なポーズとも言われていますが、股関節がしっかりと開かず膝が床から浮いてしまうと辛く感じます。体に不快感や痛みがあれば無理に続けないようにしてください。
背筋がしっかりと上へ高く伸びていて、安定して座れることを目指しましょう。体には左右差がありますが、なるべくどちらの足が内に来てもこの坐法が組めることが望ましいです。大きな怪我などのトラブルや痛みがなければ、左右どちらも同じように練習しましょう。
アルダ パドマ アーサナ (半蓮華座 / Half lotus pose /Ardha parma asana )
スカアーサナよりも足を固定するため、安定した姿勢を長時間保つことができます。
足の各関節の柔軟性が必要になるので、無理のないように徐々にこの姿勢に慣れていきましょう。ウォーミングアップとして、日頃から股関節、膝、足首を意識して動かすとスムーズにこの姿勢に入りやすくなります。
■ 手順
・まず両足を前方に伸ばして、骨盤を立てて座ります。
・片足を曲げて、足裏をもう一方の内腿に付けます。
・反対の足も曲げ、かかとをもう一方の腿の上に置きます。この時、無理のない範囲でカカトを骨盤脇(腹部脇)に近づけるように調節します。足と胴体の距離を近づけましょう。
・両腕は伸ばして膝に手を置きます。
・先のスカアーサナと同じく手のポーズは親指、人差し指で丸を作ってチンムドラかジャナムドラにします。
・頭、首裏、背筋をまっすぐに上に引き上げるようにしましょう。
パドマ アーサナ(蓮華座/Padma asana/lotus pose)
先に記述したアルダ パドマ アーサナの応用編(あるいは最終形態)です。先のポーズでは片方のカカトがもう一方の腿上に置きしたが、今回は両カカトをそれぞれの腿上に乗せていきます。
左右差があるかもしれません。無理のない範囲でどちらも練習して、最終的にはどちらの足が上でも組めることが理想です。
■ 手順
・まず両足を前方に伸ばして、坐骨をマットにつくように骨盤を立てて座ります。
・片足を曲げて、足先をもう一方の腿上(股関節の上)に置きます。
・反対の足も曲げ、足先をもう一方の腿の上に置きます。この時、無理のない範囲でカカトを腹部に近づけるように調節します。
・両方の足裏が上を向くようにしましょう。足首が内側へ曲がるよう柔軟性が必要です。
・両腕は伸ばして膝に手を置きます。
・先のスカアーサナと同じく手のポーズは親指、人差し指で丸を作ってチンムドラかジャナムドラにします。
・頭、首裏、背筋をまっすぐに上に引き上げるようにしましょう。
・イメージとしては骨盤から肋骨が離れて腹部にスペースができるような感覚です。
■ 注意
・膝関節や股関節のケガや違和感がある方、座骨神経痛の方はお控えください。
・股関節、膝関節、足首の柔軟性が必要となりますので、無理ないように関節を動かしていきましょう。
・妊娠中や妊娠の可能性のある方は、深く足を組まないようにしましょう。血流が止まり足がむくみやすくなります。足を伸ばして座ることがお勧めです。
■ 効果
両足をしっかりとホールドするため、体全体を安定させることができますので、長時間の瞑想に向いた坐法です。組んだ両足を土台にして、上半身をまっすぐ高く置くようなイメージです。背骨が体の中心である「柱」であるように意識して座ってみましょう。
体が安定して座ることができれば、自ずと精神も落ち着いて安定することでしょう。この安定した体と落ち着いた精神状態が、本当の瞑想に至る第一歩となると言われています。
「ムーラダダーラ」という根本的な生命エネルギーを司るチャクラが下腹部の奥、生殖器の近くに存在します(男女で位置が多少異なります)。また頭頂部にはサラスラーラチャクラという精神と肉体、自己と宇宙が融合できる「悟りのエネルギー」が得られる場所と呼ばれる場所があります。
正しい坐法でストレスなく安定して座ることができれば、これらのチャクラが活性化して生命エネルギー(プラーナ)の循環が良くなると考えられています。チャクラと言われても感覚的につかめない方は、つまり元気な心身になる、と捉えてみてください。
はじめのうちは「そうは言っても…」と思うかもしれませんが、是非ちょっと意識して背骨をまっすぐにして心地良く座り自然な呼吸をしてみましょう。
シッダーヨニアーサナ(Siddha Yoni Asana / Accomplished pose for women)
一般的にはシダーアーサナ、シッダーサナと呼ばれる坐法。今回は女性向けのシッダーアーサナについてご説明します。座り方に関して男女で大差はありません。しかし生殖器の近くに足を置くため、多少の効果が男女で異なります。
■ 手順
・まず両足を前方に伸ばして、坐骨をマットにつくように骨盤を立てて座ります。
・右足を曲げて、足裏は左の内腿につけます。
・この時、かかとが天井、足の甲が床の方へ向くように足首を内側へ曲げましょう。そのまま足の甲で床を軽く押すようにして少し腰を持ち上げたら、カカトを会陰部に当てます。
・左足を曲げて、左カカトを右カカトの上に置きます。
・ここで右かかとでクリトリスに圧がかかるはずです。
・右の足先をつかんで、右の太ももとふくらはぎの間に少し引き上げましょう。しっかりと足を固定します。
・先のスカアーサナと同じく手のポーズは親指と人差し指で丸を作って、チンムドラかジャナムドラです。
・両膝はしっかりと床につくのが最終形態です。
・頭、首裏、背筋をまっすぐに上に引き上げるようにしましょう。
・顎を軽く引いて、顎が床と平行になるように目線は正面。
・イメージとしては骨盤から肋骨が離れて腹部にスペースができるような感覚です。
■ 注意
・パドマアーサナと同じく足の各関節の柔軟性が重視されます。
・座骨神経痛、坐骨感染症などのトラブルがあるときは行わないでください。
・このポーズが完成したら、改めて姿勢を確認して無理のないポジションを探ります。体の感覚を観察するポイントの例を幾つかご紹介します。
(多少の背骨のカーブ、体重の乗せ方などで安定感が変わります。)
―膝はしっかり床についていますか?
―足首に痛みはないか?
背骨はしっかり高く伸ばしていますか?
―背骨に関しては、まるで植物が大地に根を張りながらも、葉が上へ伸びているような感覚をイメージしてみましょう。
■ 効果
このアーサナは背骨の中のサイキックセンター(チャクラとナディ)を通ってエネルギーが活性化していくといわれています。それゆえ、脳を刺激して神経系全体を正常に機能させることができると考えられています。
かかとで会陰部に圧をかけるため、生殖器近くにあるムーラダーラチャクラを刺激して、バンダと呼ばれるエネルギーをコントロールする部位の働きを呼び起こします。
身体的な影響としては、腰椎など腰まわりの血液循環を向上させることができます。また骨盤周囲の内臓や神経の機能も安定させることができるとのことで、生殖器機能や血圧のバランスを整えることが期待できます。
このアーサナ名にある「ヨニ」とはサンスクリット語で「子宮」あるいは「根源」を意味します。
説明されてもできない!そんな時の対処法
膝が床につかない!
⇨右股関節周りの硬さが影響しています。バタフライと言う足裏を合わせて膝を上下運動する方法など日頃から試して柔軟性を高めましょう。
⇨ひざ下のクッションやブロックを用意して支えることも良いでしょう。とはいえ、この姿勢になれるとアーサナの向上は見込めないので、日々のストレッチなどが重要です。
背筋が伸ばせない!
⇨まずは簡単にスカアーサナやただのあぐらで座ります。そしてベルトやロープなどを使って、それを両膝の下をくぐらせます。そのまま腰の後ろにまわしてホールドしましょう。組んだ足と腰を近づけることが目的です。足ばかりを胴体に近づけるのではなく、骨盤を立てて胴体を足に近づけることにも意識を向けます。
⇨他には、少し畳んだ硬い毛布やクッションをお尻の下に引いて高さをつけます。骨盤が後方へ倒れるのを防いで背骨をまっすぐ伸ばすようにしましょう。
そんなに足が組めない!
⇨関節の柔軟性を高めていきましょう。日々のストレッチや運動を重ねることでスムーズな関節の動きができるようになります。すぐに諦めず、そしてポーズをごまかさず、ストレッチなどを繰り返す少しずつ体を慣れしていきましょう。
血液のめぐりが良くなると関節も動きやすくなるので寒い時などはしっかりと準備運動などをすることを特にお勧めします。
まとめ
ヨガのクラスの始めと終わりに行う坐法。あなたはどこまで意識して行っていましたか?
無理なく楽に座ることも大切ですが、時に他の身体的に難易度のあるアーサナと同様に体の様々なところに意識を向けて座ってみる時間も是非、楽しんでみてください。新しい発見を得れるかもしれません。
それぞれの坐法の効果もご紹介していますが、このポーズをすればすぐに効果が得られるというものではありません。正しいアーサナに加えて呼吸、集中、意識も合わさって効果が現れます。
さらに少しずつで良いのですが、多くそして長く練習することが非常に重要な鍵となります。
楽な姿勢に「あぐら」をかかないで、しっかりと心身ともに効果を得る正しい「あぐら」の姿勢をご自身で探ってみてはいかがでしょうか?