ヨガインストラクターのスキルとして、シークエンス作りやティーチングと並んで大切なのが「アジャストメント」。
しかし「どこに触れたらいいのかわからない」「怖くてできない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、アジャストメントを行う上での注意点やコツ、そして初心者でもアジャストメントしやすいヨガポーズをご紹介します。
目次
1.アジャストメントとは
アジャストメントとは、ヨガポーズの調整や修正を行うことです。「アジャスト」とも呼ばれ、ヨガのレッスン中にインストラクターが参加者に対して行います。
具体的には参加者の体に触れ、支えたり押したりしながらポーズを深めること。
ポーズが正しく深まれば参加者がポーズの効果を感じやすくなる他、ヨガのスキルもアップするとても重要な役割を果たすものなのです。
しかし、知識がないまま力任せに行ってしまうと、思わぬ怪我やトラブルに繋がります。
まだアジャストメントに慣れていないという方も、もちろんそうでないという方も、コツや注意点をチェックしてみましょう。
2.アジャストメントの注意点5つ
参加者の体に直接触れるアジャストメントは、細心の注意を払いながら行う必要があります。一体どのようなポイントに気をつけるべきなのか、5つに絞って紹介します。
体に触れていいかを確認する
参加者の中には、他人に触られることを嫌う人もいます。そのため、事前に誰に触れて良くて誰に触れてはいけないのか、把握しておくことが必要です。
とはいえ、一人一人に確認し覚えておくのは難しいですよね。そこでおすすめなのが、レッスン開始時の挨拶後に確認すること。
体調確認の声かけをした後に、「アジャストメントなどで体に触られるのが苦手な方はいらっしゃいますか?」と聞いてみるといいでしょう。
もし参加者が手を挙げにくい環境であれば、最初のチャイルドポーズの時に聞くのがベター。
チャイルドポーズの状態で「この後アジャストメントに入ることがありますが、触れないで欲しい方はいますか?」と聞けば、他人を気にせずに手を上げることができますよ。
ぜひ試してみてくださいね。
急に触ったり離したりしない
アジャストメントがOKであっても、ポーズ中に急に触られたら驚くもの。参加者に触る前は、必ず「触りますよ」と一声かけてから触れるようにしましょう。
また、触れた手を離すときも急に離すのはNG。ポーズによっては不安定になってしまい、転倒してしまう恐れがあります。
アジャストメントの後はゆっくりと丁寧に手を離すよう心がけましょう。
指で触らない
参加者の体に触る時、指で体を掴むのは控えましょう。少々乱暴な印象を与えてしまいます。
アジャストメントを行うときは手のひらで触れるのがベスト。指が体に触れないよう指をそらせ、手のひらの柔らかい部分でアジャストを行うと良いでしょう。
無理に深めない
他の人の体の状態は、その本人にしかわかりません。「もう少しポーズを深められそう!」と思っても、そうはいかないこともあります。
無理に押したり捻ったりせず、相手の体や意思に合わせて行うよう意識してみてください。
なるべく全員に行う
アジャストメントを行うのであれば、なるべく参加者全員に行うよう心がけましょう。仲の良いお客さんにばかりアジャストしたり、男性を避けたりするのはNG。
とはいえ1つのポーズで全員に触れるのは難しいので、レッスン全体を通して1人1回ずつくらいアジャストに入れればOKです。
全員に平等に触れることができるよう、意識してみてくださいね。
3.アジャストメントのコツ
続いてはアジャストメントを行う上でのコツをご紹介します。参加者に喜ばれるようなアジャストメントができるよう、ぜひ覚えておいてくださいね。
正しいアライメントに「導く」意識で!
アジャストメントの言葉の意味は「調節」や「修正」ですが、実際に行うときは正しいポーズへ「導く」意識で行うとベスト。
例えば、ポーズ中に膝が曲がっている参加者がいたとしましょう。
その時に参加者の膝を押してポーズを修正しようとするのではなく、参加者の膝に触れることで参加者自身が脚を伸ばせるよう意識させてあげるのがアジャストメント本来の役割です。
ポーズを直すのではなく、サポートする意識で行うようにしてくださいね。
呼吸に合わせて行う
アジャストメントは相手の呼吸に合わせて行うとスムーズです。
というのも、アジャストメントはポーズを深める行為の一つ。
ポーズを深めるときは息を吐くことが多いので、参加者が息を吐くタイミングでアジャストメントに入ると上手くいきやすいのです。
しかし、相手の呼吸の合わせて絶妙なタイミングで入るのは至難の技。そこでオススメなのが、呼吸のリズムもこちらで指示をすることです。
まずは予め相手の体に手を当てておき、「吸って〜」と声をかけてみましょう。そして「はい、吐いて〜」と自身が声をかけるタイミングでアジャストしてあげると、無理なくポーズを深めることができますよ。
手は温めておく
冷えた手で体に触れられると、不快感を感じますよね。常温のヨガならまだしも、ホットスタジオとなればなおさらです。
したがって、アジャストメントは温かい手で行うよう心がけましょう。
どうしても手が冷えてしまうという方は、アジャストメントに入る直前に両手をこすり合わせるのがオススメです。
摩擦で手が温まるので、冷たさが少し緩和されます。また、日頃から末端を冷やさないよう心がけましょう。
4.取り入れやすいアジャストメント
「アジャストメント」と一口に言っても、その方法は様々。ポーズによっても異なりますし、参加者のレベルによっても異なります。
比較的アジャストメントを行いやすく、どんな参加者にも応用しやすいヨガポーズとその方法をご紹介しますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
チャイルドポーズ
体を三つ折りにし、体の背面を伸ばす「チャイルドポーズ」。ストレッチや休憩の役割を担うポーズですが、このポーズでもアジャストメントを行うことができます。
■ 腰を押す
チャイルドポーズを取ったとき、腰が浮いている人は意外と多いもの。腰をしっかり丸めることができれば、体の背面をより伸ばすことができます。
もし腰が浮いている人がいたら、自身の指が床に向くよう腰に手を当ててあげましょう。そして尾てい骨をマットに近づけるよう優しく押してあげると、チャイルドポーズがグッと深まりますよ。
シャバーサナ
レッスンの最後に必ずと言っていいほど取り入れられる「シャバーサナ」。参加者も動かずリラックスしていることが多いので、アジャストメントに入る絶好のチャンスです。
■ 肩を押して胸を開く
仰向けでリラックスしているつもりでも、巻き肩気味になっている人は少なくありません。
そんな方は、胸を開くよう肩を押してあげるのがベスト。自身の指が外側を向くように正面から肩に手を当て、床に向かって肩を押してみてください。
胸元がグッと伸びて、さらに深いリラックスへと導くことができます。
■ 肩を下ろしてあげる
意外と多いのが、仰向けなのに肩が上がっている人。
そんな方を見つけたら手首を掴み、腕全体を優しく足の方へ引き下ろしてあげましょう。自然に肩が下り、より深くリラックスできるようになります。
■ 眉間に触れる
シャバーサナは顔までリラックスしている状態がベスト。しかし、眉間にシワが寄っている人は意外と多くいます。
そこでオススメなのが、キュッと力が入っている眉間に優しく触れてあげること。力を抜くポイントが相手に伝わるので、顔までしっかり脱力できます。
ダウンドッグ
「ダウンドッグ」も、レッスンに必ず登場するポーズの一つ。そして、苦手な人がもっとも多いと言っても過言ではないポーズです。参加者がポーズを深められるよう、アジャストしてあげましょう。
■ 肩を押す
ダウンドッグでありがちなミスアライメントの一つが、肩が前に出ているパターン。
ダウンドッグ の醍醐味は指先から尾てい骨までの上半身をまっすぐ伸ばすことにありますから、肩が前に出ていたら優しく押してあげましょう。
とはいえ、中には肩こりが酷い方もいます。様子を見ながら押してあげてくださいね。
■ 腰を押す
ももの裏側が固い人は、腰を丸めてカバーしていることが多いです。
そんな方を見つけた場合は、参加者の前から両手で腰を押してあげましょう。尾てい骨を上に向ける感覚が掴みやすくなりますよ。
■ 後ろから股関節を引く
腰が丸まっている人へのアジャストメントとしてもう一つオススメなのが、参加者の後ろから股関節に手を当て、そのまま後ろに引いてあげる方法。
両手でマットを押し尾てい骨を天井に向ける感覚を掴みやすくなり、ダウンドッグを深めることができます。
5.まとめ
以上、アジャストメントのコツや注意点、具体的な方法について解説いたしました。
慣れるまでは、他人の体に触れるのはドキドキするもの。しかし、アジャストメントができるようになることでレッスン参加者との距離が縮まる他、信頼関係を築くこともできます。
また、自身のティーチングにも生きてくるのでぜひマスターしてくださいね。
ヨガインストラクターがレッスン中に注意すべきポイント。合わせてこちらもご覧ください。
→ヨガレッスン時にインストラクターが注意すべき3つのこと