悲劇の再来、ヨガレッスン
第1の刺客
「今日から、ヨガのアーサナ(アーサナとは、ヨガの座法、体位法のことで、ヨガポーズのことを指します)の練習をしていきます。」
担当の先生の掛け声でレッスンが始まりました。いよいよです、緊張してきました。
みんなヨガマットを敷いて準備をしています。私も自分のヨガマットを敷いて用意をしていました。ふと周りを見てみるとクラスメイトのみんなは、色とりどりのヨガウエアを上下格好良く着こなして、とても様になっていました。
皆、きれいな色のレギンス(タイツのように密着しているパンツ)を穿いているので、プリっとしたきれいな形のお尻やスラっとした長い足がよくわかりましたし、上半身は鎖骨や胸のラインが出るようなキャミソールを身に着けているので、自信溢れるボディラインがはっきりと出ていました。
ヨガウェアに関してはこちらの記事をご覧ください。
→ヨガウェアおすすめブランド【10選】全国でヨガ講師をした私が選ぶベストブランド
一方私はと言うと、その当時長く家でゴロゴロと不摂生な生活をしていたので、いかにも運動不足でポチャッとした体型でした。
着ているものも、ウエストの緩いダボっとしたバルーンのようなパンツに長袖Tシャツ、出来るだけ身体のラインが表に出ず更に動きやすいという機能を持った、俗にいうリラックスウェア的なものを着ていました。
今思い出しても笑えるくらい、スタジオの中で私1人が浮いていたと思います。
そうこうしていると、その時が突然やって来ました。第1の刺客です。
先生のヨガのポーズの説明があって個々に練習していた時、隣にいたクラスメイトの1人が突然大きな声で私に向かって言いました。
「あなた、あのとき怒られた人でしょ。凄く怒られてましたよね。」
なんと酷い言葉を言い放つのでしょうか?
そうです、このクラスメイトは、私がプレスクールの時の上級者クラスに間違って入ってしまった時、あの先生とのやり取りを全部見聞きしていた方だったのです。
私の心臓はバクバクと鳴りだし、急激に緊張し出していました。
しかしながら、自分の中で咄嗟にこの状況を乗り越えるために何もないふりをすることにしようと思い、「上級者クラスとは知らず入ってしまいましたね。あれから先生に初心者のクラスを紹介してもらいましたよ」と作り笑顔で対応しました。
それで終わってくれたら良かったのですが、「あなた、よく最後まで出来たわね」と笑われました。
他のクラスメイト達も面白そうな話だと興味津々で聞いていますし、話している本人も何だか楽しそうです。
私はその場にいることが辛くなり、今そんなこと言わなくていいのに、恥ずかしいあの時と同じような気持ちを思い出してしまいました。
何事も相手の立場や気持ちを考えてお話しをすることが大切ですよね。ここはひとまず、気にしないことにしました。
第2の刺客
そうして毎日のヨガアーサナのレッスンが続いていきました。ある日私はクラスメイトのみんなと、椅子のポーズの練習していました。
このポーズはマットの真ん中に立ち、両足を腰幅に開きスクワットをするように両膝を曲げて重心をさげる、次に両手を万歳をするように引き上げキープする、これが椅子のポーズです。
その当時、私は身体が硬く運動不足で筋力も十分に無かったのでこのポーズを保つことがとても大変で、けっして快適ではありませんでした。
それでも私なりにこのポーズを保ち続けようと努力をしていたところ、次の刺客が現れたのです。
また別のクラスメイトが私の椅子のポーズを見て、「何故、この手は上に上がらないの?身体硬いのに何しに来たの?」と言いました。
こういうことを自分の耳を疑うというのでしょう。一緒に学んでいるのにも関わらず、こんなことをいう人がいることにびっくりしましたし、正直傷つきました。
彼女も相手の気持ちをあまり考えることなく、思ったことをすぐ口にするタイプだったのです。
しかしながら、そう言われても今ある能力で精一杯やっている私には、これ以上のことは今すぐ出来るわけがありませんでした。だから、とても悔しかった。
この時、ヨガの練習を既に長くやっていて、柔軟な身体で楽しみながら練習しているクラスメイト達と私には大きな差があり、その差はすぐに縮まるものではないということもすぐに理解しました。
そういった辛い出来事が度重なり、私はこのヨガアーサナのクラスがその当時あまり好きではありませんでした。
それでも凄いものですね。座学というとても楽しみにしている授業があるから、私は練習を続けることが出来ました。
長い間社会から離れ引きこもっていたので、私は世の中には色々なタイプの方々がいることを改めて知ることになりましたし、もともとかなりの負けず嫌いの性格でしたので、これらの出来事のおかげで上に登っていきたい、登っていくという強い覚悟を持つこともできました。
今となってはこの方々に感謝ですね。
しかしながらこれで終わりではありませんでした。まだ更なる刺客がいたのです・・・。
第3の刺客
そんなアーサナの練習を毎日繰り返し行い、2週間程度経った頃でしょうか、いきなり第3の刺客が現れました。
何と、それが私たちに指導をして下さっていた恩師の先生でした。この出来事は、自分に自信を持つことの出来なかった当時の私にとって、非常にショックな出来事でした。
いつものようにヨガマットを敷いてクラスのみんなでアーサナの練習をしていたところ、突然、先生が私の近くにやってきてこう言ったのです。
「ずっと気になってたんだけど、このウェア何とかならないですか?ダボダボしていてだらしなくて、きちんとしたものに変えてください。何とかしてくれませんか?」
かなり強めの口調だったこともあり、クラスメイトの全員が一旦練習をやめてこちらをじっと見ていました。
「当然だよね」「先生の言う通り」「何とかしなさい」みんなの声が聞こえてくるようでした。
こんなデリケートなことを皆の前ではっきりと言い放つ先生に対して、私は急激に不信感を抱くようになりました。
仕事を辞めて収入がなく、電車の定期代やヨガスクールの入学金も何とか支払うことが出来たくらいだったので、例え周りの方々がきれいに格好良くしていても、私には高額なヨガウェアを買う余裕は無かったからです。
そういった個人の事情を踏まえることなく、何とかするようにと皆の前で強要してくることがとても嫌でした。
しかしながら先生の方から再度、身体の線をはっきりとさせるヨガウェアを身に着けることで、ヨガのポーズが見やすく伝わりやすくなること、スタイルをよく見せる効果があることなどをお聞きし、この世界にはこの世界のやり方があるんだと自分に言い聞かせ、家族を説得してヨガウェアを買うためのお金を出してもらいました。
翌日、クラスメイトの中でも数名の相談しやすい方にヨガブランドのお店に連れて行ってもらって、それなりのヨガウェアを買いました。
私にとってはとても高価なヨガウェアでしたが、一度着てみるとデザインが洗練されていること、意外にスタイルがよく見えること、生地が心地よくまた動きやすいことから、すぐに他のブランドのものも着てみたいという気持ちにもなりました。
この時、先生の言って下さったことを少しは理解出来ましたが、今振り返ってみても華やかだけど厳しい世界であることや、求めるものや考え方などが今までいた世界とは全く違うということを知りました。
ただ誤解をしないでほしいのですが、それぞれのヨガスクールや指導者によって考え方や指導の仕方の違いや、その後どんなヨガスタジオで働くのかによっても選ぶヨガウェアが違ってくると思います。
また、ヨガのアーサナの練習をした後に長時間の瞑想に入ることもあるので、その場合はリラックス出来るもののほうが瞑想に集中できるのではないかと個人的には思います。
今、私は時間と場所、気分によってヨガウェアを変えて楽しんでいます。このように色々と辛く感じられる出来事があったものの、私は少しずつスクール生活に慣れていきました。
その後、レッスンの内容が更に厳しくなり、1つ1つのポーズを繋げて流れるように動いていくシークエンスの練習や、頭立ちや逆立ちなどの頭と足の位置を逆さにした逆転のポーズ、相手に声をかけながら自分の手や身体を使ってポーズの修正を促すアジャストの練習なども経験しました。
どれもこれも、私は周りがびっくりするくらい身体が硬く筋力も乏しく動きも遅く、上手く出来たと言えるポーズは1つもありませんでした。
特に逆立ちや頭立ちのポーズは、これまでほとんどやったことのない姿勢であり恐怖心しか無かったため、壁や先生のアシストに頼りっぱなしの酷い状態でした。
それでも最後までこれらのカリキュラムを乗り越え、内容はどうあれ先生やクラスメイトの方々とこのヨガアーサナのクラスを何とか無事に終えることが出来ました。
本当に色々ありました、やれやれです。
次のカリキュラムはヨガ哲学です。私が学びたかった学問の1つです。
哲学の先生の授業を楽しみたい、十分に学んで質問もしたい、そういった思いから参考文献となっていた3冊の哲学の本も、授業が始まる前までには既に読んでいました。
次回は、ヨガ哲学の授業のお話となります。私がどんなことを学んで、どんなことを感じていたのか、お話をさせて頂きますね、楽しみにしていて下さい。
幸せを願って。
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