大地にしっかりと根をはりながらも、胸を開き両手を空高く伸ばす三日月のポーズは人気が高く、ヨガのシークエンスではよく採用されるポーズです。
難易度も低く、多くの人にはおなじみのポーズではないでしょうか。
今回は、この三日月のポーズを改めて掘り下げ、ポーズの効果を最大限発揮していただくことを目的としています。
三日月のポーズで得られる効果とポーズのコツを詳しく解説していきます。
目次
三日月のポーズとは
三日月のポーズはサンスクリット語で、「アンジャネーヤ・アーサナ」といいます。
アンジャネーヤは、猿の姿をしたインドの神様“ハヌマーン”の別名でもあります。つまり、ハヌマーン・アーサナ=猿のポーズとも言われています。
ハヌマーンは姿を変幻自在に変え、山を動かす怪力をもち、空を飛ぶこともできます。また、月を飲み込んで時間の経過を押しとどめるなどの超能力を備えています。
三日月のポーズは形が三日月に似ているという理由から名付けられたといわれていますが、一方で、この三日月を飲み込むハヌマーンの神話からきているともいえます。
※ちなみに、ハヌマーンはみなさんが知っている西遊記の主人公・孫悟空のモデルにもなっています。
ハヌマーンは、「勇敢」「力強さ」「忠誠」の象徴です。
三日月のポーズを行うときは、ハヌマーンのような強靭な足元と、空をも飛べるしなやかな上半身をイメージできると気持ちが更に良くなるでしょう。
三日月のポーズで得られる3つの効果
1. 股関節を柔軟にする
股関節を前後に開く姿勢をとるため、股関節の柔軟性が高まります。
リンパが多く集まる鼠蹊(そけい)部を刺激することで体内の血流やリンパの流れを促進し、むくみやだるさを解消します。
また、腸腰筋をストレッチするため、姿勢の改善や腰痛にも効果的です。
2. 肩関節を柔軟にする
胸を大きく開き、両腕を伸ばすため、背中の筋肉となる広背筋や胸の筋肉である大胸筋が強化されます。広背筋にアプローチすることで、首や肩の凝りの解消にも繋がります。
大胸筋を鍛えることはバストアップや姿勢改善にも効果的でキレイなプロポーションを保つことも期待できます。
3. 脚を引き締める
土台の安定(脚の安定)がポイントとなる三日月のポーズは、太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋と、太ももの裏側の筋肉であるハムストリングにもアプローチします。
体の中でも大きな筋肉を利用することで、ポーズを安定させる他にも、脚の引き締めにも効果的です。
三日月のポーズで重視したいのは腸腰筋
三日月のポーズは、腸腰筋の強化とストレッチができることが最大のポイントといえます。この腸腰筋は、私たちの体の中心部を支えて重要な役割を果たしています。
腸腰筋とは
腸腰筋とは、上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉であり、大腰筋、小腰筋、腸骨筋という3つの筋肉をまとめた総称です。インナーマッスルのひとつでもあり、数多いインナーマッスルの中でも美容や健康に重要な役割を果たしています。
意識しないと自分で鍛えたり、ストレッチすることは難しいと言われていますが、三日月のポーズはこの腸腰筋にアプローチできるポーズのひとつです。
腸腰筋の役割
腸腰筋は体幹を安定させ、腰椎を自然なS字カーブにキープするので、姿勢の維持に大きく貢献をしています。また、ふとももや膝を持ち上げる動きも行っています。
現代人はこの腸腰筋が弱い人や硬い人が多いと言われており、弱さや硬さが原因で腰痛や猫背、ボッコリお腹などを引き起こすこともあります。
腸腰筋を鍛えるメリット
・正しい骨盤の位置に調整されるため、腰痛の予防に効果的
・体幹が安定し、姿勢が改善される
・脚の上げ下げがスムーズになる
腸腰筋にアプローチできる類似ポーズ(レベル別)
シーラングシュタ・アーサナ 謙虚な戦士のポーズ レベル★★
ヴィーラバドラ・アーサナⅠ(英雄のポーズⅠ) レベル★★
ウシュトラ・アーサナ(らくだのポーズ) レベル★★★
ダヌラ・アーサナ(弓のポーズ) レベル★★★
マーメイドⅠ(マーメイドのポーズⅠ) レベル★★★★
三日月のポーズのやり方〈3STEP〉
上体を反らすのではなく背骨を伸ばすようにして、胸からお腹の全面、太もものつけ根までを気持ち良くストレッチしましょう。
手は肩の下に置き、膝は骨盤の下におく
2.右脚を大きく前に踏み出す
脚を大きく前に踏み出して、前脚のかかとを膝の真下におく
3.上体を起こし、両腕を上に伸ばす
上体を起こし、両腕を上に伸ばす
尾骨を下ろし、下腹部に力を入れる
胸を開き、目線を斜め上に向ける
※反対側も行いましょう。
三日月のポーズのコツを6つの部位別に解説
部位ごとに細かくポーズのコツを解説していきます。部位別に意識することで、ポーズを安全に行い、高い効果を得ることができます。
腕・肩
腕と肩の力を抜く
肩を引き下げ肩甲骨を寄せることで、肩を背中側に寄せる
両腕を上へ伸ばした際は、二の腕は耳より少し後ろに引くことを意識する
首(頚椎)
首の骨のカーブを適度に保ち、不自然な角度にならないことを意識する
顎を引き上げすぎない
目線は斜め上
背骨(脊柱)
お腹に力を入れ、体幹を安定させる
両体側をできるだけ長く保つ
胸を大きく開く
骨盤
尾骨を下げることで、骨盤を立てる
足(土台)
足裏を力強く押す
両足は坐骨幅(こぶし1個〜1.5個分)程度ひらく
前足の膝はかかとの上
足先
後足のつま先を真後ろへ向ける
三日月のポーズをする時に気をつけたいこと
三日月のポーズを行う中で、よく起こるミスアライメントとその改善方法をお伝えします。間違ったアライメントはケガに繋がるため、気をつけましょう。
骨盤が傾くのはNG
三日月のポーズは上体を後屈するポーズです。後屈を意識しすぎるあまり、骨盤が前へ傾き背中側を無理に反らし、腰を痛めてしまう人もいます。
第1に意識するのは、骨盤を立てること。尾骨を下げることを意識すると、骨盤は傾くことなく、立った状態になります。
前足の膝が足首よりも前に出るのはNG
前後の足の開脚が足りない場合、前足の膝が足首よりも前に飛び出してしまう傾向があります。また、膝が外側や内側に傾いてしまう人もいます。こうなると、膝に無理な体重がかかって、膝を痛めてしまいます。
本来の膝の位置は、足首の上でキープします。
首と肩の力みはNG
ポーズを頑張りすぎると、肩が上がる傾向になります。また、顎も上げすぎると首が不自然なカーブになり、ケガにつながります。
肩甲骨を寄せ肩を下げて、肩と耳の間にスペースを空けることを意識すると同時に、あごの上げすぎには注意しましょう。
三日月のポーズ軽減法
膝が痛む場合は膝の下にブランケットを敷く
後ろ足の膝は床についていますが、人によっては膝が痛む場合があります。痛む場合は、膝の下にブランケットを敷き、膝を守ってあげましょう。
両手をあげてバランスを保つのが難しい場合は、両手を腰や膝におく
両手を高く上げることよりも、まずは土台がしっかりとできていることが重要です。バランスをうまく保てない場合は、骨盤から足先のポーズを優先させ、両手は腰や前膝に置きましょう。
三日月のポーズを入れた股関節に効くおすすめシークエンス
三日月のポーズを入れたシークエンスでは、キャットアンドカウなどの四つん這いでレベルの低いポーズから繋げるとスムーズに繋げられます。
低いレベルから高いレベルへうつり、三日月のポーズを中心とした体全体を強化できるシークエンスを紹介します。
2.アルダハヌマーン・アーサナ:ふぐらはぎとハムストリングのストレッチ
3.アンジャネーヤ・アーサナ(三日月のポーズ)
4.ローランジ:太ももの強化
5.ハイランジ:脚全体の強化
6.パリヴリッタ・パールシュヴァコーナ・アーサナ:上半身ねじりの体幹強化
まとめ
今回は、三日月のポーズの効果やコツを紹介しました。
よく行うポーズだからこそ、今一度ポーズを見直し、効果を最大限に発揮して頂きたいです。また、日頃鍛えられない腸腰筋を鍛えるポーズですので、この筋肉も意識して行いたいです。
もちろん、深い呼吸をすることでポーズは深まりますので、基本となる呼吸も意識しましょう。皆さんのヨガライフがより良いものになりますように。