アーユルヴェーダへの思い
いよいよインドの伝統医学、古代医学、または生命の科学と言われるアーユルヴェーダの授業が始まりました。
ここにたどり着くまでの私は、理学療法士として主に西洋医学の現場で活動してきました。
その活動の中で、もっと事前に体調の変化に気づいて、患者様の身体にメスを入れることなく病気の予防が出来たり、またもし手術をしたとしてもその後の経過が良くなるようにするにはどうしたらいいのか、身体の不調を取り除くためにはどうすべきなのか、いつも考えていたように思います。
そんな毎日の中から自然と予防医学に興味を持ち始め、東洋医学、古代医学など、時代を遡るようにして本を読んでいました。
そして、いくら本を読んでみてもわからないままで、いつも知りたいという思いを持っていました。そのため、このアーユルヴェーダの授業を受けることが出来るということは、私にとってとても嬉しく特別なことでした。
実際の授業について
アーユルヴェーダの担当の先生も女性の方でしたが、哲学の先生とはまた違った雰囲気で、とても気さくで明るく比較的賑やかな方でした。
そのためでしょうか?クラスメイトのみんなは先生の周りに集まって、先生がご持参下さったスパイスやギー(バターを溶かして不純物を取り除いたもの)などを見て「これ何?」「食べれるの?」などと、とても気軽に話しかけているような状態でした。
その頃クラスメイトの間では、お互いにどこのエステがいいのか、ネイルサロンはどこがおすすめなのかなど、綺麗になるための情報をやり取りしていることが多かったことや、アーユルヴェーダの療法を取り入れたエステも知られていたことから、みんなとても興味津々に話を聞いていたように思います。
私はというと、アーユルヴェーダとは言えどもその頃はあまり美容や食事のことには興味が無かったので、少し離れたところから見ていました。
先生はいくつかのスパイスを実際に見せて味わうことも体験しながら、その効果効能について説明して下さいました。
また、ギー(バターを溶かして不純物を取り除いたもの)というオイルを使うことも学びました。作り方の説明や、実際に肌に塗ったり食べてみるという体験など、主に生活で活かすことのできるテーマについて教えて下さいました。
この時私は、古代医学について医学書の内容を伝えて下さったり、医学の歴史などにも触れながら教えて頂けるものと思い込んでいたので、正直がっかりした気持ちもありました。
しかしながら、アーユルヴェーダの資格について調べてみると、例えばインドでアーユルヴェーダ医師になるためには、まず大学の専門学部で4年学び、その後2~3年研修医として活動後、国家資格を取得することが必要で、非常に特別な資格だということがわかりました。
先生はご自身もヨガインストラクターとして活動しながら、アーユルヴェーダの教えを生活の中でその知識を活用して学びを深められてきた方でしたので、日本の若い方々が興味を持つことが出来て、実際にそれぞれの心と身体の状態に合った取り組みへと繋がるよう、このようなテーマで授業を進めて下さっていたのではないかと思いました。
そこで私も、クラスメイトのみんなのように気持ちを切り替えて授業を楽しむことにしたのです。
アーユルヴェーダ(インドの伝統医学)とは?
先生に教えて頂いた内容に個人的な見解も含まれますが、アーユルヴェーダとは何かということについてお話させて頂きます。
ヨガ哲学の中でも触れていましたが、インドには古くから伝わるヴェーダと言われる聖典があって、その中にアーユルヴェーダについて書かれているようでした。
私たちの心、身体、感情、そういったものを総合的、全体的に捉えて、全てのバランスを整えていく生命の科学とされています。
アーユルヴェーダでは、私たちはみな受胎時の両親の生命エネルギー(ドーシャ)のバランスを引き継いでいて、その私たちの根本、素材と言える体質は一生変わらないとされているのです。
またその生命エネルギー(ドーシャ)には大きく3つ、ヴァータ、ピッタ、カパがあります。
1つずつ見ていきましょう。
ヴァータは、空と風から構成され「動き」という性質を持ち、その言葉は風を意味します。ヴァータは、もともとは呼吸から生まれた生命力を現わしているそうです。
ピッタは、火と水の要素を併せ持ち、エネルギーを作り出すことから変容と熱の特性を持っています。体内の消化酵素、ホルモンの働きなどはピッタが制御しています。
カパは、地と水の組み合わせで、成長と保護といった潜在的なエネルギーが特徴となっています。骨、筋肉、細胞、組織、体液などの身体の構造のほとんどを作り上げ、精神的な落ち着きをもたらすものだそうです。
これら3つの生命エネルギー(ドーシャ)の比率が個人の細胞、代謝、思考、感情、健康状態、病気のかかりやすさなど、心と身体の全てに影響を与えるのだそうです。
自分自身の体質を知り、それぞれの体質にあった方法で食生活や身体のトリートメントを実践していくことで、未然に病気を防いでいくことが出来るそうなんです。
私たちも自分自身を客観的に見て足りないものを補い調整していくことで、自分らしく健やかにあり続けることが出来るのではないでしょうか?
また、古代のアーユルヴェーダの文献にもこんな1文があるそうです。「ドーシャが調和している人は、食欲があり、身体、精神、感覚は至福に溢れ続けている。このような人を健康な人と呼ぶ」とのことです。
ギーについて
私もやってみることにしました。先生から、実際にギーの作り方をお聞きしたので早速作ってみました。
まずバターをお鍋で焦げないように弱火で溶かし続けます。バターが完全に溶けたら、比較的しっかりとした素材のペーパータオルで溶けたバターを濾しとり、瓶にいれて保存します。
このギーとは、バターから水分とタンパク質を取り除いて得られる油脂で精製バターとも言われます。
インドでは古くから料理、祭事、医療用に使われており、肌に塗ることで肌の炎症を鎮め潤いと輝きを与えることや、身体の中に深く浸透することで身体を柔らかくしたり、関節痛の方にも非常に効果があるとのことでした。
そこで私は、その当時とても身体が硬かったので、ヨガが上手くなりたい、お肌をつやつやにしたいという気持ちもあり、朝学校に行く前にお風呂に入り綺麗にしてから身体中にギーを塗って外出したのですが、ここでまたちょっとした出来事がありました。
いつものように学校に向かう満員電車の中で、私の前に立っていたサラリーマン風の男性2人組がこんなことを話し出したのです。1人の方が「なんか、油みたいな臭いせーへん?」、そうするともう1人の方が、「ほんまやなあ、揚げ物みたいな臭いやなあ」と。
私はひやひやしながら、身体中からバターの臭いをさせながら、何とか知らないふりをして耐えていました。今思い出すと、やるといったらとことんしてしまうので、とんでもなくバター臭かったと思います。
周囲の方々にご迷惑をおかけしてしまいました。どんなこともほどほどが良さそうです。皆さんもギーを身体に塗るときは、その量や程度などを気を付けてくださいね。
アーユルヴェーダを日常で取り入れていくこと
このようにアーユルヴェーダでは、ハーブやスパイス、自然にあるものをそれぞれの体質にあわせて使うことで心と身体を整え、浄化し健康を保つことが出来るとされています。
私たちは日々の生活の中で体調や、思考、行動全てを総合的に見てバランスが取れている状態なのか、自分自身を観察していく必要があるように思います。
もしバランスが崩れていることに気づくことが出来たら、アーユルヴェーダの教えをもとに、全ての状態をまた健やかな状態へと戻していけばいいのです。
アーユルヴェーダの道とは病気に繋がるものではなく、バランス、調和のとれた道を歩むための教えだということがわかります。
ここまでお話をしていると、私は全て繋がっている、そんな風に感じています。
ヨガアーサナを練習することで、心と身体が整いエネルギーが循環して健康になっていきますし、ヨガ哲学によって心得ておくことを知って日々実践することで、自分自身を含め周囲も穏やかに平和になっていきます。
またアーユルヴェーダではそれぞれが生かされていることに感謝し、大切なご自身を健やかに整えていくこともできます。このような全ての教えは、人が幸せに生きていくための教えであり、智慧をもって豊かに自由に生きることを支えてくれているようにも思われます。
さて、今回皆様にお伝えしたアーユルヴェーダはとても歴史が長く奥深い学問です。私もまだまだわからないことばかりです。
しかしながら、このインドの素晴らしい教えを今度は、日本人としての特質やその風土に合った方法で取り入れていくことも必要ではないかと個人的には考えています。
何故ならインドの方々が素晴らしいように、私たち日本人にも日本人としての素晴らしいものがあるからです。
アーユルヴェーダについてもっと深く知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
→アーユルヴェーダとは【解説】歴史・ドーシャ・食事などがゼロからわかる!
次回はいよいよ最終回、グループでの卒業論文作成、そしてヨガスクール卒業となります。どんなフィナーレが待っているのか、皆様、是非楽しみにしていてくださいね。
幸せを願って。
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