瞑想の種類は、人の数だけ存在するといわれるほどに多様です。身体的なものから、呼吸や感覚を使ったもの、より微細なものなど様々です。
様々あるなかで、元となる伝統的な仏教の瞑想を大別すると、サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想に分けられます。
サマタ瞑想は「止行」の瞑想と言われています。ある特定の対象(呼吸など)に注意を集中し、対象から注意をそらさずに集中を高めていく方法です。
これに対しヴィパッサナー瞑想は「観行」の瞑想と言われています。
対象を定めずに心に感じたことをありのまま観察する方法で、注意を特定の対象に定めず、不特定対象に広げていくものです。瞬間、瞬間に意識に浮かんできたあらゆる事象をそのまま知覚し、観察していくのです。
一般的な仏教の瞑想ではこのように大別し、サマタ瞑想で集中力を育て、そのうえでものごとをあるがままに観察するヴィパッサナー瞑想へと移るといった段階をとります。
では、具体的にサマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想それぞれの瞑想法を見ていきたいと思います。
1,サマタ瞑想の種類
① 呼吸の瞑想
呼吸法は最もベーシックな瞑想法です。注意をご自身の呼吸に向けて集中します。呼吸をしていることを自覚し、注意がそれるたびに再び呼吸に注意を戻していく瞑想法です。
呼吸を数えたり、呼吸をコントロールしたりという手法をとることもありますが、基本は呼吸に気づくということを大切にします。
② ジャパ瞑想
ジャパ瞑想とは、マントラを繰り返し唱える瞑想法です。マントラとは、仏に対する賛歌や祈りを象徴的に表現したサンスクリット語の単語を指します。
漢訳すると「真言」と言われるもので、最も有名なものに「OM(aum=オーム)」があります。
これは宇宙の源、創造の発現から鳴り響く音節であるとされています。
「aum」を唱え、そのバイブレーションに集中することで深い瞑想に至ります。これ以外にも神々を賛美するマントラ、癒しのマントラなど数々のマントラがあり、さらに意味をもつものともたないものなどの性質の違いがあります。
マントラを唱えるときには、目的に合ったマントラを唱えることが大切です。
また、このマントラは108回唱えると良いとされていますので、マーラー(108個の珠をつないだ念珠)を用意し、珠をひとつずつ手で繰りながら唱えていきます。
唱える際、声の大きさでも瞑想の段階が深まっていきます。大きな声で唱えるより、ささやき声で唱えるより、心のなかで唱える手法が最も微細な意識に働きかけることができるとされています。
③ リキタ ジャパ瞑想
リキタ ジャパ瞑想は、マントラを紙に書く瞑想です。ゆっくりと想いを込めて丁寧にマントラを綴ります。書く瞑想は、書くという動作に集中しやすいため、初心者にも挑戦しやすい瞑想法です。
④ トラタカ瞑想
トラタカ瞑想は、サンスクリット語で「凝視する」という意味を指すトラタカに由来し、何か一点を見つめて意識を集中させる瞑想法です。
例えば、ろうそくの炎を一定時間見つめます。ろうそくの炎の長さや大きさ、色、輝きに集中します。他にも曼荼羅やオームのシンボルを見つめるなど、見つめることで思考を一時的に停止させ、瞑想を深めます。
2,ヴィパッサナー瞑想の種類
① 座る瞑想(静的な瞑想)
ヴィパッサナー瞑想で大切なのは、ただただその瞬間に感じることを意識することです。ヴィパッサナー瞑想の根本は、「今この瞬間に注意を集中する」ということです。
「今ここにある、ありのままの自分」に気づくことを一番大切にしています。思考に惑わされず、今ここにある「ありのままの自分」を見つめていくことが、ヴィパッサナー瞑想の基本となります。
座って静かに行う瞑想であれば、落ち着ける空間に気持ち良いと感じる姿勢で座ります。
まず呼吸に意識を向けます。そのうえで、聞こえてくる音や空気の流れ、周りの香りなどを感じ、言葉にして意識していきます。
大切なのは、その瞬間に感じることに集中することです。遠くの工事の音が聞こえたら、音が聞こえた、と留めることです。
その先の、「そういえば、あの辺りに新しいスーパーができると誰かが言っていた。これから少し買い物が便利になるかもしれない」など思考を進めることはしません。座ったときに感じる呼吸の動きや身体の感覚だけに集中していきます。
② 歩く瞑想(動的な瞑想)
歩く瞑想では、気づきに満ちた歩き方をします。普段、私たちは歩いているとき、目的地が入力された自動操縦モードになっています。
歩きながら会話をしたり、そのとき抱えている問題や不安について考えたり、と心は様々な方向に向かっていきます。
これを気づきのある時間に変えるのが歩く瞑想です。もし歩いているときに考え事が生まれても、それに捉われず、身体感覚に注意を向けていきます。
まずは自分の足の動きを言葉にして意識します。右足を上げたとき「右足があがった」と感じれば「右足があがった」、それよりも「足裏が離れた」という感覚が強ければ「足裏が離れた」と自分の感覚を丁寧に観察します。
右足が地面についたらその足の裏に感じる感覚を言葉にしていきます。徐々に周りの木々から感じる清々しい香りであったり、視界に入ってくる花であったり、聞こえてくる鳥の声であったりと、周囲とのつながりを感じます。
妄想をやめ、今その瞬間をありのままに感じて歩くことで、瞑想を深めます。
③ 食べる瞑想(動的な瞑想)
食べるという行為を観察していく瞑想です。一見、簡単そうですが、私たちは普段テレビやスマートフォンを見ながら食事をすることに慣れており、食べるという行為だけに集中することは難しいものです。
食べていても、つい他のものに意識を向けてしまいます。
また、この瞑想では、ゆっくりと食べることも大切にしています。
まずは、食べ物を観察することから始めます。じっくり眺めたり、香りを嗅いだりして、これから食べる食べ物に意識を向けます。次にその食べ物を観察した結果、自分のなかで起こる感情や身体の動きなどを観察します。
そして、口に入れたらすぐに飲み込まず、しっかりとその食べ物の質感や口のなかで広がる香りを感じて、ゆっくりと噛み締めてから飲み込みます。
また、食べ物に感謝することや、お腹が空いた状態で食べることも大切にするという瞑想法です。
3,その他の瞑想法
① マインドフルネス瞑想
ここまで、サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想を見てきましたが、マインドフルネス瞑想と共通する部分を感じた方も多いのではないでしょうか。
ここでは、マインドフルネス瞑想とは、伝統的な瞑想法に対してどのような位置づけなのかお伝えしたいと思います。
マインドフルネス瞑想は、サマタ瞑想、ヴィパッサナー瞑想どちらにも由来する瞑想法です。
1970年代のアメリカで、伝統的な瞑想法をベースに「現代人により適したストレス低減法」として提唱された瞑想法なのです。その手法は科学的にも効果を立証されたものを元に作られています。
また、その目的は伝統的な瞑想法が目指す「悟り」や「心の浄化」というものではなく、「ストレスの低減」や「心身の健康」を目指しているという点においても違いが見えてきます。
今後、瞑想を広めていくにあたって、マインドフルネスという手法は「近寄りがたいものではなく、より親しみやすい瞑想法」であり現代の私たちに適した方法と言えるかもしれません。
→マインドフルネスとは【解説】歴史、効果、ヨガの瞑想との違い、実践方法まで
② 慈悲の瞑想
サマタ瞑想の一種とも言われています。この瞑想の特徴は、価値判断をしない瞑想ではなく、「価値観をもつ瞑想」であるという点です。その価値観とは、「自分自身の幸せ、生きとし生けるものの幸せを願う」というものです。
「私」と「他者」の区別を解かしていき、あらゆるものを慈悲の心で包んでいきます。「私」と「他者」を区別することで対立や葛藤が生まれ心が乱れるのを、区別を解かすことで境界線を無くし、心を平穏な状態に導きます。
この慈悲の瞑想は即効性があると言われています。慈悲の瞑想を行い、心の土台作りをしたうえでさまざまな瞑想を行うことで、さらに瞑想を深めることができます。
おわりに
ここまで、さまざまな瞑想法をご紹介してきましたが、これ以外にも数多くの瞑想法があります。ご自身の状況や求めるものによっても適した瞑想法は変わってきます。
色々な瞑想法を試し、そのときのご自身にとって適した瞑想法を実践できれば、より瞑想を深めることができます。
また、瞑想はあまり体調の悪いときには行わないようにする、などいくつか注意点もありますので、まずは信頼できる瞑想の指導者を見つけることも大切です。