新型コロナウィルスの影響により私たちの生活は大きく変化し、それに伴って精神的な負担は大幅に増加しています。2020年8月の自殺者数は1800人を超え、新型コロナウィルスの影響の可能性も大きいのではないかと推測されています。
新しい生活様式への対応や外出を控えたりといった日常生活の様々な変化、学校生活や仕事上でのオンライン化などへの対応、収入面や将来への不安など、戸惑いや葛藤を抱えがちな現在、知らず知らずのうちにストレスを溜め込みやすくなっています。
こうした心身の負担を軽減しストレスを上手に解消しながら、社会状況を見極め冷静に対応できる平常心を育み、心配や不安といった感情に呑み込まれず心穏やかに過ごすための方法が、今求められているのではないでしょうか?
こうした変化の大きな中で、ヨガにおいてもストレスマネジメントやメンタルヘルスに役立つものがさらに求められる可能性が大きくなっています。
今回は、ヨガインストラクターとしてそうした需要にも対応しやすく、どなたにでもおこなっていただける究極のリラクゼーション法と言われる「ヨガニードラ」をご紹介します。
「ヨガニードラとは」から、効果、資格の種類、おすすめ養成講座などまとめてお伝えします。
記事の後半には、開催されている養成講座を一覧にまとめているので、ぜひご覧ください。
1. ストレス社会のための「眠りのヨガ」ヨガニードラとは?
ヨガニードラの「ニドラー」とは、サンスクリット語で「眠り」を意味し、「眠りのヨガ」とも呼ばれています。
古来よりヨガ行者や賢者によって密かに伝えられてきたものですが、現在ではインストラクターのガイダンスに従いながらおこなう安らぎを育むガイド瞑想、あるいはリラクゼーション法として伝えられています。
瞑想に対して抵抗をお持ちの方や、敷居が高く感じ敬遠しがちな方にもおこなっていただける、誰もが実践できるヨガ瞑想です。
一般的なヨガニードラの方法は、仰向けの姿勢でインストラクターの声に耳を傾けながら、眠りと覚醒の間のまどろんだ状態でリラックスしていきます。
難しいアーサナ(ポーズ)が無いため、病気や怪我などをお持ちで身体を動かすことが困難な方や、疲労感をお持ちの方、ヨガ初心者の方にもおこなっていただきやすく、今注目されているヨガのひとつです。
2. ヨガニードラに期待できる効果とは?
究極のリラクゼーション法とも言われるヨガニードラには、具体的にどんな効果が期待できるのでしょうか?
ヨガニードラは身体や呼吸、感情や判断力などの緊張を手放していくため、リラックスはもちろんのこと、10分間の質の良いヨガニードラの実践によって1時間の睡眠効果があると言われ、心身の休息や不眠の解消に役立ちます。
不必要な心と身体の力を手放すことで日常生活で蓄積されたストレスを手放しやすくなり、忙しい毎日を過ごしている方やストレスを溜め込みがちな現代人に最適なヨガとも言えます。
さらにスワミ・サッチダナンダ師のヨガニードラの方法では、サンカルパ(大願・決意)を唱え、眠りと覚醒の合間のリラックスした状態で潜在意識に働きかけるため願望実現や自己肯定感を育みやすくなる、想像力や記憶力の向上などの効果も期待できます。
ヨガニードラは、身体の各部位に一つ一つ意識を巡らせるため、脳の動きが体性感覚野に集中し雑念が湧きにくくなります。
さらにヨガニードラでリラックスすることにより、筋肉が緩まり、呼吸がゆったりと落ち着き、副交感神経が優位になり、内臓機能の促進や自律神経のバランスが整うなどの効果も期待できます。
このヨガニードラと臨床心理学や脳神経科学を取り入れた、ヨガ・ニドラーの世界的権威者と言われるリチャード・ミラー博士によって生み出されたiRestヨガ二ドラでは、米国国防総省との共同研究によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)への科学的効果が証明されています。
その他、トラウマや鬱、慢性的な痛み、不安や恐れ、不眠などといった様々な心的なストレスの改善が証明され、アメリカでは診療所や学校、ホスピスや軍事病院などでも取り入れられています。
こうした科学的根拠に乗っ取ったヨガニードラを活用した方法が、実際に様々な場所で効果を発揮している現在、ますますヨガニードラは注目を集めるに違いありません。
3. ヨガニードラの方法とクラスへの取り入れ方
ヨガニードラをレギュラークラスとして開講しているヨガスタジオはまだまだ少ないのが現状ですが、特別クラスやイベントレッスンなどで開講しているスタジオも多くなってきました。
また通常のヨガクラスにも取り入れやすく、瞑想に抵抗をお持ちの生徒さんにも比較的取り入れていただきやすいため、身体を動かした後シャヴァ―サナ(亡骸のポーズ)の前におこなっていただくこともできます。
さらに仰向けの姿勢のままでおこなうため、ヨガニードラはオンライン向きとも言えます。これからオンライン化がより進むにつれレギュラークラスへの導入の可能性が大きいとも言えます。
一般的なヨガニードラの流れは以下のようになります。
②ヨガマットやヨガラグ、ブランケットやアイピローなどを用意します。
③仰向けになり、両脚を腰幅程度に開き、両手の平は上向きにし、脇の下にこぶし一個分くらいのスペースがあるように身体から少し離した場所に腕を下ろします。冷えやすい方はブランケットをかけ、やさしく目を閉じます。(アイピローを目の上に乗せるとよりリラックス効果が高まりやすくなります。)
④息をたっぷりと吐き出し、全身を床へゆだねます。
⑤サンカルパ(大願、決意)を考え、自分が望んでいることが既に叶っているように言い切る形でその言葉を3回唱えます。(例えば、「私は心も身体も健康です。」「私は自信に満ち溢れています。」「私は仕事で成功しています。」「私は優しさに満ちています。」など、既に叶ったように心の中で唱えます。)
⑥身体の緊張を手放すために筋弛緩法をおこないます。(右足、左足、右手、左手などとそれぞれ順番に各部位を緊張させたり弛緩させたりを繰り返し、一つずつリラックスさせます。)
⑦インストラクターのガイドに従って、身体の各部位を一つ一つ観察します。(右足、足首、ふくらはぎ、膝、太もも…などと順番に意識を巡らせていきます。)
⑧心地良い程度に深い呼吸を繰り返し、呼吸を調整します。(身体が広がったり、緩んだりする様子に意識を向けながら呼吸を整えます。)
⑨深い呼吸を繰り返しながら、インストラクターのガイドに従って美しい自然の景色などをイメージし、心と身体を解放します。
⑩心と身体が落ち着いてきたらイメージを手放し、今のご自分のあるがままを観察します。
⑪最初に唱えたサンカルパ(大願、決意)を、ご自分の内側に向かって願いを込めて3回唱えます。
⑫ゆっくりと意識を外側へ戻すように深呼吸を繰り返し、徐々に身体を動かし、ゆったりとした心持ちで日常に戻ります。(そのまま眠りに入っても構いません。)
ヨガニードラを体験すると、途中眠りと目覚めの間のまどろんだような状態になりますが、リラックスして眠ってしまう方も多いようです。
できることならば、眠りと覚醒の合間の状態が理想的ではありますが、眠ってしまったとしてもヨガニードラの効果はあるとのこと。眠ってしまうということは、それだけ疲労を抱えているという心と身体からの大切なメッセージなのかもしれません。
そんなご自分を受け入れることも大切なヨガや瞑想の練習の一部なのかもしれませんね。
4. ヨガニードラをクラスに取り入れたい方必見!資格を取ろう!指導者養成講座のご紹介
4-1. ヨガニードラ指導者養成講座のご紹介
ここまでお読みいただいてヨガニードラに興味を持たれた方は、ぜひヨガニードラクラスを体験してみてください。
そして、ご自分の体験をもとに生徒さんにヨガニードラを伝えたいとお思いの方は、指導者養成講座に進まれることをおすすめします。
現在はコロナ禍によりオンラインでの開講が主となり、対面クラスならではのインストラクターや他の生徒さんと共に過ごす空間の神聖さや、ヨガニードラによる静けさ、安らぎの雰囲気などとは体験が異なりますが、実際にオンラインでお伝えすることを想定していらっしゃる方には現在開講中のオンライン受講がおすすめです。
■ ヨガニードラ・セラピスト養成講座(3日間)
・主催:ヨガジェネレーション
・場所:現在はオンライン開催
・所要時間:3日間
・受講対象者:セルフケアやストレスマネジメントに興味がある方、セルフプラ クティスとして取り入れたい方、ヨガインストラクターでクラスに取り入れた い方、初心者、妊婦の方も受講可能
・受講費用:58,000円(税込)
■ ヨガニードラ・トレーニングコース
・主催:ヨギーインスティテュート
・場所:新宿・名古屋ほか、オンライン開催も有り
・所要時間:2日間
・受講対象者:ヨガインストラクターの方、リラクゼーションを深めたい方、自 己実現の力を高めたい方
・受講費用:51,500円(税抜)
■ ヨガニードラ指導者養成講座
・主催:アールユーシーヨガアカデミー
・場所:現在はオンライン開催のほか、3名まで通学受講可能(東京都中野区)
・所要時間:4日間
・受講対象者:癒せるヨガインストラクターになりたい方、ヨガインストラク ター以外も受講可能。
・受講費用:68,000円(税抜)
4-2. ヨガ・メンタルケアヨガ指導者養成講座のご紹介
コロナ禍ということも重なり、多くの方々がメンタルケアやストレスマネジメントに対して積極的になっている現在、実際にヨガクラスをおこなっていると、生徒さんから質問などと共に個人的な問題やメンタル面などについて相談を受けることが多くなりつつありませんか?
こうしたとき、ヨガインストラクターとしてできることとは一体どんなことなのでしょうか。
ヨガインストラクター自身のメンタルケアも怠ることなく、身近な人たちや生徒さんのサポートをするために何かをしたいと思っている方や、アーサナだけの指導からもう一歩進んだヨガを伝えたいとお思いの方のために、今回はヨガニードラの学びと共に、アーユルヴェーダやメンタルヘルスのためのヨガを学べる指導者養成講座もご紹介します。
■ メンタルケア(心のためのヨガ)指導者養成コース
・主催:ヴィオラトリコロール ヨガ&ピラティスインストラクタースクール
・場所:現在はオンライン開催
・所要時間:9日間
・受講対象者:ヨガインストラクターのスキルアップを目指す方、生徒さんの助 けになりたい方、自分自身の心のケアをしたい方、自信を持って指導をしたい 方
・特徴:ヨガニードラ他、アーユルヴェーダによるタイプ別ケア、指導者自身の ケア、ストレス緩和法なども学べる。
・受講費用:69,410円(税込)
ヨガニードラの体験談
『ヨガとアーユルヴェーダ』『呼吸と瞑想』『メンタルケアヨガ』について、更に知りたいと思い勉強し資格を取得を目指した形です。
特に心を整える手助けとなる『メンタルケアヨガ』インストラクター取得コースの中で学んだヨガニードラは、心のバランスを整える癒しのヨガでした。
これら全ての資格は、ヨガヴィオラトリコロール(大阪市・中央区)で学びました。『メンタルケアヨガ』コースは20時間のトレーニングで65,000円ほど。
ヨガニードラは、体だけでなく精神や感情に働きかける優れたリラクゼーション法のひとつです。そして、体の硬いことでヨガの扉を開くのを躊躇している方やヨガ初心者など誰もが参加できる動かないヨガです。
まずはシャバーサナの状態か坐法で、プロップスを用いて自分自身が快適な状態を作ります。この快適な状態だけで体への負荷が軽減され、気持ちが緩んでいきます。その後、インストラクターが語りかける言葉に眠ることなく意識だけを向けていきます。
初めのうちは気持ちよすぎて何度も寝てしまい、こっそり目覚めて…の繰り返しでしたが、いつの間にか眠らずに最後まで行うことができるようになりました。これは頑張るとか努力する練習ではなく、体が徐々に慣れていくようです。
そしてヨガニードラで最も特徴的なことは、サンカルパ(決意・決心)を行うことです。最初は、サンカルパの度に何にしようか考えすぎて決めることができずもやもやしていましたが、段々と自分の望みがわかってくるようになりました。これは、日常で忘れがちなことを見直すきっかけとなりました。
そして、身体や呼吸、気持ち、感覚へと意識を向けていくことで、次第に別世界を散歩しているかのような心地よい状態になっていき、終わったあとは心身とも深くリラックスして満たされていました。
しかし、インストラクターとしては他のクラス以上に準備が大変なように思えました。
何よりも重要なのは、誘導するためのストーリー作りやリラックスしてもらうための話し方など事前の入念な準備です。ヨガニードラの中でオリジナリティが特に出るのは、ストーリー。
特別な状況ではなく、イメージしやすい場所や風景を用いて想像力を働かせて作成します。言葉から映像をイメージしやすいように具体的で簡潔で明確な文章にすると共に、話す時も急がず明確に眠らせないように話す必要があります。
練習のためには、原稿を録音し自分で聞き直してみることをおすすめします。自分の気付かなかった話し方の癖などに気づくことができるうえ、これを自分用にも使うことができるので一石二鳥です。
短時間で心と体がリラックスして、自分が望んでいることが明確になるヨガニードラ。私自身ヨガニードラを行うことで、心のバランスを失うことなく目的を持って過ごせる日々が増えました。ぜひ多くの方に体験して欲しいと思います。
そしてインストラクターとしては、ヨガニードラだけのクラスを行うことや、通常クラスでしっかり動いた後にシャバーサナの時間を多めにとってヨガニードラを行うこともできるかと思います。
アーサナを教えるだけのインストラクターから、ヨガニードラを通して心のケアも伝えることができるインストラクターを目指すことができるので、この勉強をしてとてもよかったと思います。
なお、当時はコロナ前でしたので対面でしたが、今であればオンラインで受講できるスクールがおすすめかもしれません。というのも、そもそも資格取得後はオンラインで教える機会も多いと思われるためです。少しでもオンラインでヨガニードラを受講して、感覚を上げておくことをおすすめします。
5. 誰もが実践できる究極のリラクゼーションを伝えよう!
ヨガと言うとマットの上でおこなう身体を動かすものと思われがちですが、本来ヨガは瞑想によって真我を目指すものでした。
現代ヨガの発展によって身体へのアプローチにフォーカスするようになってきましたが、地球環境の変化による自然災害の多発、新型コロナウィルスの影響による変化など、多くのストレスを抱える現代人にこそ瞑想は必要なツールになっていくのではないでしょうか。
そうした中で、瞑想に対して積極的になれない方々にも取り入れやすく、安心しておこなっていただけるヨガニードラは、無意識的に溜まっているストレスを解放し、短時間で効果的に心身の疲労を取り除くことができる現代人にとって重要な役割を果たすものだと思います。
ヨガ初心者の方、身体を動かすことが苦手な方、病気や怪我を抱えていらっしゃる方、ご高齢の方、妊娠されている方にも、誰もが実践できるヨガニードラの普及は、ストレス社会の救いの手となるに違いありません。
多くの方々が心身の健康と幸福の日々を過ごすことができるように、これからヨガインストラクターとして活躍されるお一人お一人がその担い手であることを忘れずに、身体的なアプローチにとどまらない、心の健やかさや平和、安らぎを育むことができるヨガをお伝えいただけることを願ってやみません。
こちらの記事もおすすめ
→ヨガの基本【八支則(はっしそく)とは】なぜ八支則は大事なのか?