ヨガをしていると耳にする「八支則」や「ヤマニヤマ」とは、なんのことかご存知ですか?
「八支則」は、ヨガの哲学書「ヨガ・スートラ」に書かれたヨガの基本となる教えです。ヨガを実修するための8つの段階、行法を示したもので、現在の生活にも応用が出来ます。
今回は、そのヨガの基本となる「八支則」について、全体像をご紹介します。
また、八支則はどうしても抽象的な概念のため、実例がないと腑に落ちないかもしれません。そこで、私や他の型の具体的な事例もお伝えできればと思います!
目次
ヨガの哲学「ヨガ・スートラ」と「八支則」とは?
ヨガの語源である「ユジュ」は、サンスクリット語で「結ぶ、統合する」という意味。ヨガの哲学書「ヨガ・スートラ」には、自分と向き合い、より調和のとれた良い状態へと導く教えが書かれています。
実践する上で重要な8つステップをまとめた「八支則」。日々の生活に取り入れることで、ヨガを通して人としての成長へと繋がっていくでしょう。
それでは、さらに詳しくみていきましょう。
ヨガの哲学「ヨガ・スートラ」とは?
「ヨガ・スートラ」は、それまで口伝えであったヨガの教えを文章にまとめたものです。聖者パタンジャリ師によってまとめられ、現在まで受け継がれています。
ハタヨガやアシュタンガヨガなども「ヨガ・スートラ」を元に派生した流派です。また、さまざまなスタジオがヨガの基本的な考えとして取り入れ、人々に伝えています。
アシュタンガ=八支則 アシュタンガヨガの意味
「八支則」はサンスクリット語で「アシュタンガ=8つの枝」と訳されます。「八支則」には、ヨガの行法と日々の生活で気をつけたいことなどがまとめられています。
現在ではその教えを少しづつ心がけることで、自分の感情に振り回されたりせず、楽しい日々を送れるよう教え伝えられています。
多くのスタジオでアシュタンガヨガのレッスンがありますが、「八支則」のことではなく別のヨガのスタイルで、本来は「アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガ」と言います。
シュリ・K・パタビジョイス師によって考えられ、「ヨガ・スートラ」「八支則」の教えを元にヨガのプラクティスを行います。運動量が多く、中級者向けのレッスンが多いヨガとなります。
ヨガの「八支則」とは? 生活にも活かせる教え
それでは、「八支則」について詳しくみていきましょう。今回は、ヨガ講師やヨガ経験者たちのそれぞれの体験談を載せているので、是非一緒に読んで参考にしてみてくださいね。
① ヤマ Yama(禁戒)
日々の生活環境や人間関係の良い状態を保つための5つのポイント。
1. アヒンサ Ahimsa(非暴力、不殺生)
周りの人に物理的な暴力や言葉の暴力を振るわないように気をつけましょう。また、自分自身へも暴力を向けて傷つけないようにします。思考をする面でも気をつけましょう。
その5つの心得で、ヤマの最初の教えであるアヒンサは、とても大切な教えといわれています。暴力という強い言葉を聞くと、誰しも自分は暴力なんてふるっていないと思うのではないでしょうか。わたしも初めてこのアヒンサの教えを学んだとき、「暴力なんて自分とは無縁」だと思い、あまり重要視していませんでした。
しかし、アヒンサの意味はとても深く、そしてとても身近な教えであることに気付くことになります。
例えば、誰かを傷つける言動を慎むことや、自分の怒りに他人を巻き込まない、誰かの時間を悪口などで奪わない、冷たい視線や態度で傷つけない、不満をぶつけて八つ当たりしない。
このようなことも、アヒンサの教えだと知りました。
マハトマ・ガンディーが独立運動のモットーに「アヒンサ」を掲げ、武器や戦力を使わずして、インドの独立を成し遂げたことは有名な話です。
暴力というと、他人に対するものと捉えがちではないでしょうか。
しかし、アヒンサの教えでは、自分を責めることや自分を傷つける言葉も、自分自身に対する暴力だと説かれています。
よって、わたしがずっと「自分のことが嫌い」と言っていたことも、わたしに対する暴力だったのです。
また、無視することも暴力だと云われています。本当の自分を知らないことは、自分自身を無視すること。
かつて私は、無意味に他人に対して過剰な謙遜や、自己卑下をしてしまい、本当のわたしを無視してしまっていました。
また、よくストレスから暴飲暴食してしまっていたのですが、それも自分のカラダの声を無視し、自分のカラダに暴力をふるってしまっていました。
そしてアヒンサの学びは続きます。
アヒンサを意識することで、考え方や行動、言葉、生き方全体を変えていくことができると。
私はRYT200の資格を取得する過程で、このアヒンサの教えを知り、アヒンサの学びを実践すること学びました。
今では、自分自身に暴力的な言葉を投げることも少なくなり、わたしを大切にすることができています。
「New Me わたしだけの新しい人生の見つけかた(著者:横幕真理)」■プロローグ:あなたは、自分が好きですか? より一部引用
2. サティヤ Satya(嘘をつかない)
常に正直で誠実に。見栄を張ったり、他者を傷つけることがないように気遣うことが大事です。ただし、「アヒンサ」を考え他者を傷つけるような真実は言わないように気をつけましょう。
自分の気持ちや願いにも嘘をつかない、というのもサティアの考え方です。
3. アスティヤ Asteya(不盗)
盗むことはしない。欲張ってしまわないこと、また、相手の時間を奪わないことなどを気をつけましょう。相手への思いやりを持って生活をすることが大事です。
→https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/g34650998/wellness-yoga-philosophy-20201119/?slide=4
盗むというのは、ものを盗ることだけではありません。気付かないうちに誰かの時間を奪っていないか、無意識の状態に意識を向けてみることもヨガに繋がりますね。
4. ブラフマチャリヤ Brahmacharya(禁欲)
あらゆる欲望に振り回されて、エネルギーを消耗しないように気をつけましょう。気持ちに振り回されて大事なことを忘れてはいませんか?
過剰な欲望は自分を見失うきっかけになります。
→https://saradayoshiko.com/2019/08/15/
5. アパリグラハ Aparigraha(不貪)
必要以上に執着しないこと。独占欲を抑え、必要以上に持ちすぎないことが大事です。持ちすぎると失うことに怖くなり、他者への嫉妬や怒りへと変わって来てしまうかもしれません。
→https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/g34650998/wellness-yoga-philosophy-20201119/?slide=5
物だけでなく、過去の自分や他人に執着しすぎると本来の自分を見失ってしまいます。フラットな自分でいることは、今の自分を見つめたり意識づけを繰り返したりすることで培われます。
② ニヤマ Niyama(勧戒)
日々の生活の中で自分自身とうまく付き合うための5つのポイント。
1. シャウチャ Saucha(清浄)
身だしなみや周りの空間、心をきれいに保つこと。普段から過ごす場をきれいに保ち、身だしなみに気をつけることで、自分や他人に不快な思いをさせないように心がけます。
そして、心の清浄とは、嫉妬などのネガティブな思考を取り除くことです。
ヨガ講師も意識をすることからヨガ哲学を実践しています。気になる体験談はこちらから↓読んでみてくださいね。
2. サントーシャ Santosha(足るを知る)
周りの環境や人間関係、自分の能力、健康など、自分が置かれている状況全てに満足し感謝すること。満足していると人からの目線を気にすることなく、自然と笑顔で過ごすことができるでしょう。
サントーシャとはわかりやすくいえば、持っているものに目を向けること。自分にできないことや、足りないと思うことに意識を向けるのではなく、今あるもの、できることに目を向け、感謝する心を養うことがサントーシャの教えです。
わたしはかつてロンドンに英語留学していたことがありました。
その時はできない自分に何度も出逢い、多くの挫折を経験しました。できなかったことばかりに目を向けて、今あるもの、できることに目を向けず、落ち込み、自分を肯定できないまま、何もかもが嫌になり、ロンドンでもひきこもってしまった経験をしています。
自分にできないことや、足りないと思うことに意識を向ければ、自分を否定することになります。今までわたしは自分を否定し続けていました。だからずっと苦しかったのです。
そうではなく、自分の周りの人や物、状況、与えられた身体や能力、役割など、今あることに意識を向けましょう。そうすることで、与えられていることに喜びを感じ、感謝の気持ちが生まれ、自己肯定感を高めることにつながります。
これがヨガの教えです。
思い通りにいかないとき、あなたは他人と自分を比べたり、不満を抱えて感情的になったりしてしまっていませんか?
以前のわたしはできない自分とできる他人を比べては落ち込み、できないわたしにいつも苛立っていました。
自分を否定しても、何も解決できません。
帰国前の最終テストで落ちたのも、「わたしはスピーキングができない」とできない自分に意識を向け、これまで学んできたはずの「あること」に意識を向けることができなかったことで、100%のわたしを出せなかったからです。
今ある状況も役割も、すべてが「自分の成長」のための学びだと気づき、目の前に立ちはだかる困難や問題は、「すべて乗り越えられる課題」だと捉えて受けとめることができていたら。
大きく強い意志で、常にそこから学ぶ態度でいることが大切だと気づいていたら。結果は変わっていたはずです。
ロンドン留学時代のわたしが、今あることに意識を向けていたら、自分を変えようと、さらにいろいろなことに挑戦できたのかもしれません。
はじめてのヨガでは、周りと比べることなく、「身体が硬い自分でもポーズは取れて、マイナス2キロも達成できたこと」に満足し、ヨガを継続できていたでしょう(ロンドンの留学中にヨガに初めて挑戦しましたが、1ヶ月たたずに辛くて辞めました)。
筆記テストは得意だったので、英語の知識は頭にしっかりと入っていた。そのことに意識を向けていれば、スピーキングテストでは自信をもって話せたはずです。
ロンドン留学での苦い挫折体験は、サントーシャの教えを実践し、自己肯定感を高めることの大切さを、今のわたしに教えてくれていました。
そのことに気が付いた今では、自分を誰とも比べることがなくなり、満たされた気持ちになります。
「New Me わたしだけの新しい人生の見つけかた(著者:横幕真理)」■CHAPTER1:自分を探しにロンドンへ より一部引用
3. タパス Tapas(苦行)
心を強くするために困難に立ち向かい鍛錬すること。ただし、自分自身を痛めつけたり、我慢することではありません。苦しい状況でも受け入れて成長できるように心がけます。
苦行と聞くとストイックに頑張るというイメージをしてしまうかもしれませんが、自分にとって適切であることが大切です。こちらの↓体験談から、自分にとってのタパスをチョイスしてみましょう。
4. スヴァディアーヤ Svadhyaya(学習、向上心)
自分を成長にさせてくれるような書物を読むこと。心を調えてより良い方向へと導いてくれる本を読み自身への成長に繋げましょう。
ヨガだけに限らず、学びを続けることは人生において大きなフィールドを占めます。
5. イーシュワラ・プラニダーナ Ishvarapranidhana(信仰)
万物に感謝をして、献身的に生きていこうという気持ちを持つこと(神への信仰心)時代や自然の力など自分ではどうにもならないことを受け入れ、身を委ねること。
③ アーサナ Asana(坐法)
瞑想を深めるために、安定し快適に座っているための坐法を学びます。体の柔軟性や力をつけ、長時間座っているために様々なアーサナを練習します。ヨガのアーサナは、体を鍛え整えることで、心も整えてくれます。
レッスンで行われるのが、坐法であるアーサナを取ることです。ヨガのアーサナを通して経験したことは人それぞれですが、人生が変わるほどの体験をされた方もいらっしゃいます。
→https://shumi.info/5/experience/137
④ プラーナヤーマ Pranayama(調気)
プラーナヤーマは呼吸法と捉えられますが、本来サンスクリット語の「プラーナ」は生命エネルギーのことを指します。呼吸を整えることで、体のエネルギーを調整していきます。
呼吸は体と心とも繋がっており、呼吸が落ち着けば心と体も落ち着きます。また、しっかりとした呼吸をするには、正しい姿勢が必要です。つまりアーサナを深めることが必要となります。
普段無意識に行っている呼吸ですが、深い呼吸を意識することで体調や感情にも大きな変化を感じられるでしょう。
⑤ プラーティヤハーラ Pratyahara(制感)
いつも外へと向いている感覚を内側に向けることで、瞑想は深まります。自分自身を客観的かつ冷静的に見ることで、日々の感情に振り回されないよう、鍛錬をしていきます。
ヨガ実践者が感じたプラティヤハーラの感覚と、プラティヤハーラのためのシークエンスはこちらから↓読んでみてくださいね。
⑥ ダーラナー Dharana(集中)
瞑想の第1段階として、意識を1点に集中させます。心が1つに集中することで、1点に向かうパワーが大きくなります。
段階を得て得られた集中力は、仕事や生活の中のメリハリにも繋がります。
→https://ilchibrainyoga-hachiouji.com/
⑦ ディヤーナ Dhyana(瞑想)
ディヤーナはサンスクリット語で瞑想の意味。雑念は無く、無に向かっていく深く静かな瞑想状態を指し示します。
最近では”マインドフルネス“から瞑想という言葉をよく聞くようになりました。
⑧ サマーディ Samadhi(三昧)
瞑想が深まり、一点集中しているものと一体感を感じている状態を表しています。自己や周りに惑わされることなく整った世界へ。
以上が8つのステップ「八支則」です。ヤマ、ニヤマの教えは現在でも応用ができ、自身の行動を振り返るときに手助けとなってくれるでしょう。家族や周りの人が笑顔で幸せな時間になるように心がけることがあると思いませんか?
サマーディは、ヨガを始めたからといってそう簡単に味わえるものではなく、日々繰り返す練習の積み重ねが必要になります。
→https://www.facebook.com/317809332171601/posts/593278571291341/
インストラクターとして「八支則」を考える
「八支則」を学ぶと、日々の生活を送る中で大事なことに気づかされることが多くなります。
ついつい子供に怒ってしまうことや何かに不満を抱くことは、自分がどこにいるかを考えることで、捉え方を変えることができます。
ヨガを教えるようになって、いろんな人の悩みを聞くことも多くなりました。ヨガの教えを元にアドバイスをしたり、ヨガをしてもらうことで気持ちを楽になってもらったりと、常に「八支則」を考えるようになりました。
相手が見れば客観的に見ることができることも、自分自身ではうまく行かないものです。1人では何も解決はできません。ヨガをしている友人や家族とお互いに伝えあって見るのも良いかも知れませんね。
「ヨガ・スートラ」や「八支則」を定期的に読み返すことで、客観的に捉えることができ、自分自身への成長にも繋がっています。もちろん忘れて感情に振り回されていることもあります。
その時、気付くようになることが、まずは「八支則」を考える第一歩となるのではないでしょうか?
「八支則」について知りたい方向けの書籍
「New Me」はクロスメディア・パブリッシング社より出版している、MAJOLI代表である横幕真理初の著書です。
ヨガの哲学の教え「八支則」はとても素晴らしく人生を豊かにする考え方なのですが、どうしても言葉が少し難しく、初心者の方が理解するのに時間がかかってしまいます。
でも、わたしはこの八支則の教えに救われて、それまで自己肯定感が低くコンプレックスのかたまりだった人生から、「わたしだけの新しい人生」を見つけることができたのです。
だからこそ、この八支則の考えを、もっと簡単でわかりやすい言葉で、現代に悩みながら不安を抱えて生きる女性の皆さんに知ってもらいたい。皆さんにとっての「新しいわたし」に出逢ってほしい。
そう思って、ヨガ哲学の基本となる八支則を、わたし自身のエピソードを元に、どの本よりも分かりやすく解説したストーリー本となっています。
ヨガ哲学の超入門書として、ぜひご一読ください。
ヨガの「八支則」を生活に取り入れてみよう
日々の生活にも当てはめることができる「八支則」は、現代でも様々な場面に置き換えることが可能です。
嫌なことや怒りなどにとらわれて自分の時間を過ごしてしまうのは、楽しくありませんよね。気持ちをコントロールして、健康で楽しい日々を送れるようにヨガの教えを活用してみてはいかがでしょうか?
5,000年の歴史がある伝統医学、アーユルヴェーダは食事や睡眠などの生き方を見直すことを元にしています。ヨガの哲学に興味のある方はこちらもご覧ください。