街を歩いている時、何かのタイミングで漂ってきた香りに、忘れていた記憶が呼び起こされる経験をしたことはありませんか?
香りは、普段意識していなくても記憶の中にとどまり、瞬時に様々な神経を刺激します。自分の好きな香り、苦手な香りを意識して使い分けている方もいらっしゃるかも知れません。
アロマショップだけでなく、いろいろな場所で目にするアロマグッズ。気軽に使えるものも沢山販売されており、身近なものになっています。アロマが心身にもたらす効果は様々で、ヨガでもアロマが持つ効果を期待して天然のアロマを楽しみながらヨガをするアロマヨガクラスが人気です。
人気の理由は、やはり心や体に効果があるからではないでしょうか?
今回は、アロマの知識やアロマとヨガの関係、ヨガにおすすめのアロマについて説明します。
目次
アロマとは
アロマとアロマテラピー
アロマとは、フランス語で「香り」「芳香」を意味し、アロマテラピーとは、フランス人化学者ルネ=モーリス・ガッドフォッセ(1881〜1950)によって作られたアロマとテラピー「療法」の2語による造語で「香りを使った療法」を意味します。
“アロマテラピーの父”といわれるガッドフォッセは、1910年に火傷を負いました。すぐに病院で治療を受けましたが治りが悪く、身近にあったラベンダー精油を塗布したところ傷が治った経験から精油を用いた治療法について研究した話は、アロマテラピーを知る人の間ではよく知られています。
その後、フランス人医師が第二次世界大戦中に傷ついた兵士の治療に精油を使ったり、オーストラリア生まれの看護師が個人の症状や体調に合った精油を選んで使ったりする考え方や精油を使ったマッサージが広く受け入れられていきました。
日本では、1980年代後半から広く人々に知られるようになりました。
アロマテラピーは日本では医療として認められていませんが、100%天然の植物の香りを使った自然療法で、心身の不調を癒し健康維持に効果的なセラピーです。
一般的には、アロマテラピーもアロマと呼ばれています。
アロマの歴史
アロマは、人類の文明と共に発展してきました。古くは紀元前4000年頃のメソポタミア文明が栄えた頃、呪術や占星術を行う時に香りを焚いていました。古代エジプト時代には、ミルラやフランキンセンスの樹脂を燃やした「薫香」が神に捧げられた記録も残っています。
本来アロマは、王族や聖職者しか使うことができないほど貴重なものでした。
古代インドで発展したヨガと姉妹関係にあるアーユルヴェーダでも、ドーシャバランス(体のタイプのバランス)を整えるために多くのアロマが使用されていました。
アロマオイルと精油(エッセンシャルオイル)
アロマオイルとは、アルコールや人工香料など植物から抽出したオイル以外のものが混じったオイルで、ポプリなどに使用します。
精油とは、100%天然の植物からのみ抽出されたオイルです。精油は水には溶けにくいのですがアルコールや油脂にはよく溶け、強い香りがあり、蒸発しやすい特質があります。
光や熱、酵素によって傷みやすいので、遮光瓶に入れて保管します。植物から抽出されたものなので人体に害がないように思えますが、体質によっては痒みや刺激を感じたりシミになったりしますので注意が必要です。禁忌事項がありますので、確認してから使用するようにしましょう。
精油は、皮膚や呼吸器から体内に吸収され、汗、尿、便、吐く息から排泄されます。精油を使用した後は、足湯やお風呂で体を温めて発汗を促すとより効果が期待できます。
オイルを購入する際は、遮光瓶に貼られているラベルに「エッセンシャルオイル」「精油」「Pure Essential Oil」などの表記があるか、「植物の学名」「抽出部位」「抽出方法」「品質保持期限」「ロットNo.」が表記されているかを確認して購入しましょう。
アロマテラピーで使う場合は、必ず精油を使いましょう。
アロマテラピーの3つの作用
アロマテラピーには、心に対する働き、体に対する働き、皮膚に対する働きの3つの働きがあります。精油を体に塗布する際は直接塗らず、必ず希釈して使用するようにしましょう。
心に対する作用
揮発性の高い精油の香りによって刺激される脳の部位は、大脳辺縁系、視床下部、下垂体です。
大脳辺縁系は、食欲、睡眠欲、性欲、記憶などの人間の本能や喜怒哀楽に関わり、自律神経をコントロールしています。視床下部は、体温調節や血圧、心拍数などに関係しており、下垂体はオキシトシンなどのホルモンの分泌をコントロールしている器官です。
これらは心の影響を受けやすく、感情が安定しているとスムーズに働きます。感情が安定していると、体の機能もスムーズに働くので病気になりにくいことがわかっています。
また、精油の香りは、脳内の神経伝達物質であるエンドルフィン、セロトニン、アドレナリンなどのホルモンを分泌する働きがあります。
エンドルフィンは「体内のモルヒネ」といわれ、高揚感、幸福感、陶酔感をもたらします。セロトニンは「しあわせホルモン」といわれるホルモンのひとつで、自律神経を整えて平常心を保つ働きをします。
アドレナリンは交感神経が活発な時やストレスを感じた際に心を守るために分泌されるホルモンで、集中力や行動力を高める働きがあります。
精油はこれらのホルモンの分泌を促すことによって、心の状態を整える効果があります。
体に対する作用
自然の中で生育した植物には、自分自身を守るための成分が多く含まれています。その成分は免疫力を強化し抗ウィルス抗菌作用が含まれたものが多く、抽出された精油にも同じ成分があります。
精油を皮膚に塗ると、それらの成分が皮膚から吸収され、体の免疫力を上げたり消化器官の働きを活発にしたり血液やリンパの流れを促したりする働きがあります。精油を使ったマッサージでは、精油の成分とマッサージが合わさることで相乗効果が期待でき、筋肉の痛みや緊張を解きほぐす効果がより期待できます。
皮膚に対する作用
精油には、肌の調子を整える効果があります。精油の殺菌作用は、ニキビケアや傷の消毒に使うことができます。また、自分の好きな香りを嗅いでリラックスすると、血管が拡張し血流が促進されるので、肌のターンオーバーを活性化する効果があります。
精油を使ったマッサージでは、タッチセラピー同様、情緒を安定させて脳をリラックスさせる効果が期待できます。
ヨガとアロマ
歴史が古く、時代を超えて長く続けられているヨガとアロマ。どちらの効果も直接目に見えるものではありませんが、深く楽しめるようにヨガとアロマの相乗効果についてみていきましょう。
ヨガ×アロマの効果
呼吸を意識しやすい
ヨガをする時は、必ず深い呼吸と共に行います。呼吸をする時は、口を使わず鼻呼吸で行い、腹式呼吸、胸式呼吸、ヨガの呼吸法と使い分けて行います。ヨガの呼吸法は、自律神経を整える効果やセロトニンの分泌を増加させる効果、ダイエット効果や心を整える効果など多岐に渡ります。
香り高いアロマは鼻から吸った時に香りを意識しやすく、その香りを吸い込もうとする呼吸も無意識に深くなります。深い呼吸が行われることで、ヨガとアロマの効果もより高まり相乗効果が期待できます。
五感を刺激する
日常生活の中で、視覚や聴覚、嗅覚は、意識することなく大量の情報を受け取り、気がつかないうちに脳や心はストレスを抱えています。ヨガは、意識を自分の内側に向け心を落ち着かせることによって五感を研ぎ澄まし、脳を休める効果があります。
呼吸に伴って体内に取り込まれたアロマの成分は、人間の本能を司る脳の大脳辺縁系に直接働きかけ、私たちの意志では届かない本能をコントロールします。ヨガとアロマで脳や心のストレスを軽減し、五感の質を高める効果が期待できます。いつも頭で考えてしまう人や気持ちの切り替えが苦手な方には特に効果的です。
もし、アロマヨガクラスに参加して自分の苦手な香りに出会ったときは、遠慮せずに先生に相談しましょう。
チャクラを活性化させる
ヨガでは、人体にはエネルギーの出入り口であるチャクラがあると考えられており、アロマもチャクラに働きかけると考えられています。各チャクラと対応する精油については諸説ありますが参考までに紹介します。
第2チャクラ・スヴァディスターナチャクラ:オレンジ、カルダモン、ジャスミン、ネロリ、ローズ
第3チャクラ・マニプーラチャクラ:ブラックペッパー、ベチバー、マンダリン、ラベンダー
第4チャクラ・アナハタチャクラ:プチグレン、ベルガモット、メリッサ、ローズ
第5チャクラ・ヴィシュッタチャクラ:カモミール、ユーカリ、ミルラ
第6のチャクラ・アジュナチャクラ:ジュニパー、ペパーミント、ローズマリー
第7のチャクラ・サハスラーラチャクラ:ジャスミン、ネロリ、ラベンダー、ローズ
リラックス効果
ヨガで行う呼吸は、日常の呼吸よりも深く長い呼吸を意識的に行います。呼吸をコントロールすることで乱れがちな自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にさせて心拍数を落ち着けリラックス効果を高めます。
精油にも、リラックス効果を高める効果がある成分が含まれたものがあり、ヨガと精油を組み合わせることで神経をより沈静化させる効果が期待できます。
深くリラックスすることができますので、1日の活動を終える夜に効果的です。
集中力が高まる
ヨガを行う時は、呼吸の長さや深さ、身体の動かし方、視線がどこにあるかなど全てに意識を働かせて行います。意識する事柄が多いので、「今行っている行為」以外に注意を向ける暇がないので自然と集中力が高まっていきます。
また、鼻で呼吸をするヨガの呼吸法は、酸素を効果的に脳へ届け集中力をアップさせる効果があります。
精油にも集中力を高める効果があるものがあり、ヨガと組み合わせることでより集中してヨガを行うことができます。集中できない時や日中など、活動的な時間に行うことをおすすめします。
デトックス&美容効果が高まる
呼吸と共に指先まで意識するヨガのポーズは、身体のエネルギーや代謝を高め、健康増進や美容に役立ちます。デトックス系のクラスでは運動量も多めになりますので、いつものクラスより汗をかきやすく、むくみが解消されるなどの効果が期待できます。
老廃物や水分を体外に排出しやすくする効果がある精油を組み合わせることで、相乗効果も期待できます。体調がよい日中に行うことをおすすめします。
ヨガにおすすめのアロマ
ヨガをする時は、ご自身が好きな香りを選んでもらうことが一番大切ですが、ヨガのタイプによって効果を高め合う精油がありますので紹介します。
■ リラックス(陰ヨガなど):カモミール、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、ジャスミン、ゼラニウム、パルマローザ、マージョラム、ネロリ、ラベンダー
■ 瞑想:アンジェリカ、コリアンダー、サンダルウッド、シダーウッド、ジュニパー、ネロリ、パチョリ、ヒノキ、フランキンセンス、ローズウッド
アイテム
お気に入りの香りや目的に合った精油を見つけたら、実際に使って効果を確かめてみましょう。お部屋全体を香らせるアロマディフューザーやルームスプレーのほか、体に塗布できるロールオンタイプのオイルもおすすめです。
ヨガの前後に使えるヨガマット消毒用のアロマスプレーも販売されています。
精油をもっと楽しみたい方は、アロマキャンドルやルームスプレーを自分でブレンドして作ることもできます。
BRUNO ノスタルアロマランプ ダークウッド BOE028-DW BOE028-DW
ニールズヤード「ルームフレグランススプレーバランシング」
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ヨガアロマロールオン YOGA AROMA ROLL ON
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【ヨガマット専用 除菌・消臭クリーナー】ヨガマットクリーナー YOGA MAT CLEANER
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おすすめYouTube動画
ヨガスタジオのアロマヨガクラスに出てみることもおすすめですが、いつでも自分の目的と好きな香りに合わせて行えるアロマヨガをご自宅で試してみませんか?
アロマヨガのシークエンスは決まったものはありませんので、目的に合わせたシークエンスで行ってください。ここではおすすめのYouTube動画を紹介します。
【寝落ちヨガ】ぐっすり眠れるアロマリラックスヨガ
YUMI先生 アロマリラックスヨガ25分 ♡1.0【鹿児島のヨガスタジオShanti Peace(シャンティピース )】
アロマリラックスヨガ – 1週間の疲れをリフレッシュ / NOA ONLINE YOGA
【7分で若返る】 デトックスヨガでみるみる不調改善☆ 心も体もスッキリ爽快! #465
【毎日8分】 ストレス解消ヨガ 肩こり解消と骨盤調整にも効果的! #571
アロマの資格と活かし方~アロマを深く知るために~
アロマをもっと深く知りたいと思う方は、アロマの資格を取得してみてはいかがでしょうか?
アロマの資格は全て民間資格ですので、それぞれの団体によって内容や価格が異なります。資格を取得するための受験料や合格後の登録料、協会年間費などもかかってくる場合がありますので、講義内容や資格内容をよく確かめて、ご自身の目的に合った資格取得をおすすめします。
ヨガインストラクターの方はアロマの資格を取得することで、アロマヨガクラスの指導ができることはもちろんのこと、通常のクラスでも生徒のみなさんにアロマを使ったケアについてアドバイスすることができます。
また、クラス内でウォーミングアップのマッサージをする時やシャヴァーサナの時などにも、生徒の皆さんとアロマの効果を楽しみながらクラスを進めていくことも可能です。
【AEAJ】アロマテラピー検定
→https://www.aromakankyo.or.jp/licences/aroma/
アロマ&ケアスペシャリスト資格取得講座
→https://jafa.jp/アロマ&ケアスペシャリスト
ジャパン・エコール・デ・アロマスクール オンラインIFPA資格取得コース
→https://aromaschool.jp/course_online
メディカルアロマ検定
→https://www.medical-aroma.jp/kentei/
ニールズヤード アロマセラピーレッスン
→https://www.nealsyard.co.jp/school/aroma/
ヨガの効果もアロマも効果も目に見えるものではないので、「ヨガにおすすめのアロマ」を参考にご自身で実践してみましょう!太陽礼拝を日常的に練習している方は、いつもの練習と精油を使って練習した時との違いを感じてみてください。
アロマを深く知ることで、ヨガの効果を高めて毎日を楽しみましょう!