ヨガのなかでも最も重要とも言える呼吸法には様々な種類がありますが、「ブラーマリー」という呼吸法をご存知ですか?
ヨガクラスではあまり練習することがない呼吸法ですが、ヨガインストラクターの方、ヨガインストラクターを目指す方ならば知っておきたい呼吸法のひとつです。
今回はマインドの鎮まりや瞑想の静けさを味わうことができる呼吸法「ブラーマリー」をご紹介します!ブラーマリーのプラクティス後の体感が、きっとあなたを瞑想に導いてくれることでしょう!
目次
1. ヨガにおける呼吸の重要性とは?
「Yoga」という言葉は「Ya」=呼吸、「A」=守ってくれるもの、「U」=つながり、「Ga」=先生を指すと伝統的なヨガでは伝えられています。
ヨガにおいて重要なことのひとつには、このYogaの「Ya」が指し示しているとおり「呼吸」があげられます。
現代では、ヨガと言えば一般的には身体を使ったアーサナ(ポーズ)の練習をイメージしますが、初期のヨガでは、アーサナとは「蓮華座」を指し、このアーサナ(坐法)が瞑想の基礎となっていました。
心身の在り方を整えて清らかに保つための生き方のガイドラインとも言えるヤマ(禁戒)、ニヤマ(勧戒)、そして心身の土台である坐法(アーサナ)を整え、呼吸をコントロール(プラーナヤーマ)し、五感をコントロール(プラティヤーハラ)して、集中(ダーラナ)を促しマインドを鎮め、瞑想(ディヤーナ)からさらに瞑想の究極の状態(サマディ)に到達することがヨガ本来の目的でした。
そして、このヨガの段階的な練習(八支則)は、無意識的な在り方から意識的な在り方をする練習とも言え、そのために「意識的な呼吸」の練習が重要となります。
近代ではアーサナ主体のヨガが多くの方々に実践されており、流派やヨガスタイルによって様々な捉え方がありますが、ヨガは呼吸を犠牲にしてアーサナの完成を目指すものではなく、アーサナを使って呼吸を深めるものです。
呼吸なくしてヨガの深まりはありません。
私たちの心と身体をつなげてくれる呼吸は、命の営みそのものです。
その呼吸に立ち返ることこそ、あなたの心を和らげ、心身の安定と健やかさを培い、瞑想へ、そして自己の本質へと導いてくれることでしょう。
2. ブラーマリー呼吸法とは?
ヨガには様々な呼吸法がありますが、今回ご紹介する「ブラーマリー」とは、サンスクリット語で「大きなメスの蜂」を意味し、蜂の羽音のような音を出す呼吸法です。
ハミングをするように音を出すことで頭蓋骨に振動音が響くため、その余韻を味わうことで心が鎮まりやすくなります。
また、この「ブラーマリー・プラーナヤーマ」は、ハタ・ヨーガの原典「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」にも紹介されており、この呼吸法をおこなうことで「アーナンダ(歓喜、幸福)」が生じたと記されています。
マインドがせわしないときや、やるべきことで心も頭も一杯一杯なとき、ストレスを感じているときなどにも、このブラーマリーの実践によって心地よい静けさを感じることができ、心の穏やかさを取り戻すことができるため、「アーナンダ」と言われるような至福を感じることがきっとできるでしょう。
3. ブラーマリー呼吸法の効果
ヨガの呼吸法には、自律神経のバランスを整える、質の良い睡眠を促す、心肺機能や胃腸の働きが整えられる、免疫力のアップ、血行促進、冷えの改善、アンチエイジング、リラックス効果、集中力を養う、心の安定や穏やかさを培うなどの効果が期待できます。
ブラーマリーももちろんそれらの効果が期待できますが、さらにヒーリング効果が高いというのが、ブラーマリーの最も特徴的な効果だと言えます。
また、吐くときに音を出すことに集中するため、吐く息が自然と長くなります。
そのため、日常生活やヨガをおこなうときにも浅い呼吸になりがちな方にとって、ブラーマリーの練習は吐く息を長くするコツがわかりやすく、深い呼吸が身に付きやすくなります。
さらに、ご自分が出した蜂の羽音のような音を頭蓋骨に振動させ、その音と振動の余韻を感じることで、マインドが鎮まり、瞑想で味わうことができる心の静けさや穏やかさを体感することができます。
こうした瞑想で感じることができる内なる静けさや至福の体感を積み重ねることで、心配や不安、怒りを和らげ、乱れた心を落ち着かせ、心の安定を培うことにつながります。
こうしたヒーリング効果が高いブラーマリーは、不眠症でお悩みの方に質の良い睡眠へと導く効果も期待できるためおすすめです。
睡眠前や瞑想の前におこなうことで、よりブラーマリーの効果を実感できるでしょう。
4. ブラーマリー呼吸法の練習方法
一般的にはブラーマリーはアーサナの後に座った状態で練習をすることが推奨されています。
② 数回深呼吸してリラックスしましょう。
③ 両耳を人差し指でふさぎます。
④ 口を軽く閉じて鼻から息を吸い、鼻から吐くときにやわらかくハミングをするように「んーーーーー」と音を出し、その振動音を頭蓋骨内に響かせるようにします。
⑤ ④を10~20回程度繰り返しおこなってみてください。
⑥ 終了したら、ブラーマリーの余韻を感じましょう。
ブラーマリーを深めるポイント
吐くときにハミングをする際、まるで頭の中に蜂が飛んでいるかのように音を出してみましょう。
どんな呼吸法も同様ですが、肩に力が入ったり、無理をして息苦しさがないように心地良いペースで、心や身体、そして顔全体もリラックスしておこなってみてください。
ブラーマリーをおこなっている最中や、またその後におこる繊細な音の響きや余韻、振動、イメージなどに集中をしてみましょう。
ブラーマリーは音や振動の余韻を身体の内側でしっかりと味わうことが重要ですので、さらに体感を深めるために親指で耳をふさぎ、その他の指で目をやさしく覆うようにすると、外側の情報がシャットアウトされ、内側に集中することができます。
伝統的な方法では、息を吸った後クンバカ(止息)をおこない、シャーンムキー・ムドラ(親指で耳をふさぎ、人差し指で目を、中指で鼻を、薬指と小指で口をふさぐ)をおこなってから息を吐いていく方法などがありますが、こうした方法は熟練した指導者の下でおこなうことをおすすめします。
5. 様々な呼吸法が導くヨガの深まり・瞑想へ
普段、無意識に呼吸をし、常に外側の情報に翻弄され、無意識的な反応をしながら生活している私たちは、「本来の自己」を見失って生きているとヨガでは考えています。
ヨガ本来の目的は、この「本来の自己(プルシャ)」に戻ること。
そのためにはまずマインドを鎮める必要があります。
Yogaの語源である「Yuj(つなぐ)」が指し示すように、呼吸が私たちの心と身体をつなげ、心・マインドを鎮めてくれます。
ヨガの呼吸法を通じて、呼吸をコントロールする方法を身に付けることにより、揺れ動く心を鎮め、心身を浄化して初めて自己の内側に向かう準備ができるのです。
今回ご紹介したブラーマリーはヒーリング効果が高く、瞑想をおこなったときの内なる幸福を味わうことができる呼吸法です。
こうしたヨガの呼吸法を通じて、ストレスを解消し、心を穏やかに保ち、心身の健やかさを培い、心の安定と、瞑想へ、さらにはヨガ本来の目的であるあなた本来の生き方につながりますように…!
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