初めまして。私はトレーナーとして働いているオカと申します。
今回はスポーツトレーナーとして働くために必要な資格と、資格取得のために入学すべき学校選びのポイントについて解説します。
私はトレーナーとして働き始めて15年になります。
働き始めた当初は独学で勉強をし、アルバイトとして齢者の運動教室のスタッフや学校の部活でトレーナー活動をしていましたが、プロのトレーナーとして仕事をしたいと考え、鍼灸あん摩マッサージ師の資格と日本体育協会発行のアスレティックトレーナーを取得しました。
その後、幸運にも機会を得て、プロアスリートにアスレチックトレーナーとして治療やトレーニング指導をすることを仕事とさせてもらえています。
このページを開いている人は、スポーツトレーナーに興味があり、その職を目指している方だと思います。
資格取得や専門学校の選び方、業界の傾向など失敗しないコツがいくつかあるので、これから資格取得を狙っている方は参考にしてください!
目次
業種の分類と専門性
資格取得の前に自分がどの分野のトレーナーとして活躍したいのかを明確にしておく必要があります。
スポーツトレーナーとまとめて考える方が競技スポーツの現場でもいまだに多いのですが、実際は整形外科領域の知識をもち、外傷や傷害、健康管理、リハビリを担当する「メディカルスタッフ」とコンディショニングや筋力トレーニングを指導する「トレーニング指導者」に大別されます。
もちろん、知識や技術として両方の分野で活躍されているトレーナーの方もいらっしゃいます。
しかし、契約チームの事情や個人契約のトレーナーなどでどちらの仕事も務めている方もいらっしゃいますが、どちらも初めから両立できる人は極めて稀です。
さらに、高い専門性を持っている方は違う領域の仕事はその領域の専門職に任せる事が良いと知っている方が多いので、多くの専門職が関わるプロスポーツの現場ではさらに稀になりますので、これから資格取得を目指す前に自分の目標とする働き方を知っておくと良いでしょう。
メディカル/治療スタッフ
医療資格を持ち、医師と連携して選手の治療や疲労回復のためのケアを実施する専門職です。
主に外傷障害の治療やマッサージ、怪我から競技復帰へのリハビリを担当することが多い。
アスレティックトレーナー
治療スタッフと共に選手の健康管理のほか、テーピング、コンディショニングの指導を行い、選手の怪我の応急処置や予防、競技復帰へ向けてのアスレティックリハビリテーションを担当する。
選手に関わる健康管理、怪我からの競技復帰までの全てを担当するため、障害や外傷の知識だけでなく、内科疾患や救急救命の知識と技術、フィジカルコンディショニングに関するトレーニングの知識を持ち「監督と選手」及び「医師と選手」の橋渡しを行うことも重要な役割となります。
チームスポーツでは医療資格を保有したアスレティックトレーナーが在籍しており、治療スタッフと兼務している事が多い。
S&C、ストレングスコーチ
選手のパフォーマンスアップや障害予防を目的に筋力トレーニングやコンディショニングのトレーニングを指導する役割を持ちます。
競技によってはチーム全体のコンディションを管理するポジションであり、個人だけでなく複数の選手を同時に管理するためのデバイスの運用経験を求められるポジションでもあります。
そのため、競技スポーツの現場では「トレーナー」より「コーチ」としての立場に立つ場合が多い。
また同様の役割が競技によってはフィジカルコーチと呼ばれているスタッフが行うため、役割の混同が多い職種である。
業種ごとの必要な資格
メディカルスタッフに必要な資格
2023年10月現在において、日本国内でトレーナーを職業とするために必ず必要な資格は存在していません。
極端な例ですが、明日から「私はトレーナーです!」と言ってしまえばトレーナーとして活動できるのですが、プロのトレーナーとして活動している人は、医療系の国家資格を取得している方ほとんどです。
特にプロのスポーツチームに所属しているトレーナーは医療資格が必須と言ってよいでしょう。
スポーツ現場で働くトレーナーが取得している医療資格は主に以下の3つの国家資格になります。
鍼とお灸とマッサージのプロ、スポーツチームのトレーナーは多くの人が取得している。
骨折と脱臼の治療のプロ、脱臼や骨折が多いラグビーやアメフトに代表されるコリジョンスポーツでは重宝される。
医師の指示を受けて患者のリハビリを担当する職種、整形外科などの病院での勤務が殆んどだが、近年はスポーツチームに雇用される例が増加してきている。
メディカルスタッフに求められるのは選手の傷害予防と怪我をした場合に「早期に安全に復帰させる」ことです。そのため受傷後の初期対応とリハビリの部分で適切な対応が出来る事が重要です。
さらにリハビリの分野は近年重視されており、リハビリのプロとして理学療法士の活躍が広がってきています。
アスレティックトレーナーに適している資格
アスレティックトレーナーの名称が使用されている国家資格は日本にはありませんが、日本国内においては日本スポーツ協会の発行するアスレティックトレーナー(JSPO-AT)が有効な資格として上げられます。多くの競技団体や日本代表のトレーナーの方が取得していますが、合格率は約20%と取得のハードルが高い資格となっています。
私もJSPO-ATは取得していますが、1回目の試験は不合格、翌年に再受験してやっと合格しました。
アスレティックトレーナーは担当する分野が広いので、多くの事柄について知識を得る必要があり試験の難易度は高くなっています。日本では最短2年で受験資格が得られますが、海外だと4年生の大学を卒業しないと受験資格すら得られない場合もあります。
S&C/ストレングスコーチに適している資格
アスレティックトレーナーと同様に国家資格はなく、民間団体が発行している資格を取っている方が多くいます。無資格で指導経験を積み、選手の信頼を得ているトレーニング指導者の方もいらっしゃるので、無資格が一概に悪いと言える状況ではありません。
競技によっては競技団体が発行しているライセンスがあり、その競技団体で働く場合は指定のライセンスを取得する必要がある場合もあります。
トレーニングに関する研究は日夜進んでおり、最新の情報は英文で作成された論文を読むことで得る事が出来ます。そのため、大学院や海外の大学に進学してスポーツ科学についての知見が深い方が有利な状況になることが多くあります。
資格取得のメリット
メリット
前述の通り、プロチームでトレーナーとして働く場合は、医療系の国家資格がほぼ必須となるので、その道のスタートラインに立てる事が最大のメリットと言えます。
仮にトレーナーとして仕事を獲得出来なかった場合でも医療資格を持っていれば治療院や病院での勤務も可能になるので、無職になるリスクを回避できるのも利点の一つと言えるでしょう。
また、スポーツ業界の求人は一般に公開されない者が殆んどであるため、スポーツ系の専門学校や大学に進学することで、スポーツ業界の人脈を形成することが出来るのも大きなメリットです。
デメリット
資格取得のデメリットは大きく2つ、期間と費用です。
医療系の国家資格であれば短くて2年、長くて4年の時間が必要になります。働きながら学生生活をすることは難しいので、学生に集中できる環境を用意する必要があります。
また、学費に関しては取得する資格によって大きな開きがあります。専門学校の学費は学校やプログラムの長さによって異なりますが、おおよその参考情報を以下に示します。
• 4年制の大学: 約400万円から800万円
学費は学校や学部によって異なりますので、詳細な情報は各学校のウェブサイトやカウンセラーに問い合わせて確認しましょう。
プロとして働くトレーナーから見る、この資格および仕事のニーズ
トレーナーの仕事は、選手のコンディションや痛みといった、目に見えない内容をコントロールすることが重要になります。そのため治療においては職人的な感覚やこだわりを持って取り組むトレーナーが多くいましたが、昨今では画像検査技術の向上やスポーツ医科学の進歩により、今まで数値化できなかった部分の可視化が進んできています。
感覚に頼らざるを得なかった部分が明確な画像や数値として捉える事が出来るようになったため、今後は科学的な知見に基づいた専門性の高い教育を受けた人材がスポーツ現場に入ってくることが予想されます。
実際に、今回の記事では紹介していませんが海外のトレーナーの資格を取得して日本のスポーツ界で働いている方も年々増えて来ています。
それと同時に一般のスポーツ愛好家の方にもトレーナーの存在は認知され始めています。パーソナルトレーニングのジムが爆発的な増加を見せており、知識や技術が未熟なトレーナーが増えて来ているのも実際です。
世間的にはトレーナーのニーズは今後も高まるものと考えますが、働く場所や対象とする相手に応じて適切な提案が出来るように、知識と経験を積んでいかなければならない職業なので、一流の環境で働き続けるのは簡単では無い職業だと思います。
まとめ
メディカルスタッフに必要な資格とトレーニング指導者に必要な知識や経験について説明させてもらいました。
最初に書いたように、プロスポーツの現場では専門性が細分化されその領域のプロが役割を担うことが当たり前になりつつあります。
それでも、自分の専門領域以外の知識や情報を取り入れて行くのは必要になります。
治療やトレーニングだけでなく、栄養やメンタルの知識も選手からは求められるからです。
常に自分のアップデートを続けて、選手にとってポジティブな影響を与えられるトレーナーを目指して動き出す方にとって、資格取得がそのスタート地点となる事を知っていただければと思います。
このページの情報が駆け出しトレーナーの方にとって役立つことを期待しています。