「チェア」は、大きなものが多いピラティスマシンの中でコンパクトなマシンのひとつです。
コンパクトな分、一見地味な印象を受けますが、特に初心者にとっても効果的なトレーニングツールです。
この記事では、ピラティスチェアの基本的な知識や種類から、その効果やメリット、魅力まで、実際のエクササイズを紹介しながら詳しく解説します。
目次
ピラティス「チェア」とは?
ピラティスチェアの特徴
チェアはピラティスエクササイズを効果的に行うための専用マシン「ピラティスマシン」の中でも、ひときわコンパクトなマシンです。
- いすのような形をしたマシン
- 踏んだり、押したりできる可動式のペダルがついている
- 立ったり、座ったり、様々なポジションでのエクササイズが可能
文字通り、いすのような座面と、可動式のペダルがついています。また、このペダルには複数のスプリングがあり、引っ掛ける場所や本数を変えることで、その人にに合わせた強さやポジションなどの調節が可能です。
30種類以上のエクササイズが可能で、体幹部だけでなく、脚まわりや股関節、腕や肩周りを効率よく鍛えることができます。
立った状態、座った状態の他にも、片足や片側だけで行うエクササイズも多く、体幹の安定性やバランス感覚を鍛えるのにピッタリで、美しい姿勢を目指すにはおすすめのマシンです。
妊婦や高齢者など、仰向けやうつ伏せといった姿勢が大変な方でも、その人に合わせたエクササイズができるのも大きな魅力です。
ピラティスチェアの起源
ピラティスチェアの起源:ソファの改造だった
ピラティスチェアは、ピラティスの創始者ジョセフ・ピラティス氏がアパートのような狭い居住空間でも運動ができるように、日常生活で使われていたソファを改造して作られたと言われています。
一家に一台置いてもらえるようにと、使わない時は通常の椅子としても使えるワンダチェア。
それをベースに機能を加えたエレクトリックチェア。
現在では、より機能や使い勝手に工夫を凝らして作られたコンボチェアが、多くのスタジオに導入され、ピラティスのチェアとして使われるようになっています。
ピラティスチェアの種類やその違い
広い意味では、「ピラティスのチェア」=「ワンダチェア」という言い方をすることがありますが、ここではもう少し細かく分けて解説します。
ワンダチェア
引用元:Gratz Pilates.
普段はいすとしても使えるエクササイズマシンとして作られた、オリジナルに近い形のチェア。ちなみにいすとして使う場合は、このままではなく、床についている面が背もたれになるように起こします。
引用元:PEAK PILATES®
他のものと比べ、高さが低く、スプリングは2つ、ペダル部分もシングルペダルとシンプルかつコンパクトな作りになっています。
現在では、より使いやすく、より調整しやすく改良されたチェアがあるため、解剖学的なアプローチをする現代的なモダンなピラティスで使われることは少なく、オリジナルに忠実なクラシカルピラティスで使われることが多いです。
エレクトリックチェア
ハイチェア、ビックチェアとも呼ばれる3つの中では一番大きなチェア。
引用元:Gratz Pilates.
電動ではないのにエレクトリックチェアというのは、見た目が処刑に使われる電気椅子のようだからだそうです。
側面に高さのあるハンドルと、持ち手がついた背もたれのようなボードが付いているのが特徴。また、座面のシートを外すとその下には、足を置くディレクションがあり、それに合わせることで正しいポジションが意識できるようになっているなど、様々な工夫が詰め込まれています。
引用元:Balanced Body
オリジナルに忠実なシングルペダルだけでなく、左右違った動きのできるスプリットペダルのものや、ワンダチェアにオプションパーツを取り付けることでエレクトリックチェアにできるものなど、様々なタイプがあります。
引用元:Gratz Pilates.
コンボチェア
ワンダチェアとエレクトリックチェアが合体(コンボ)したチェア。
ワンダチェアとエレクトリックチェア、両方のエクササイズができることに合わせて、ペダル部分がスプリット(左右別々に動かすことができる)、スプリングの数が4本など、ひとり一人に合わせた調節できるようにアレンジが加えられています。
ワンダチェアより座面が高く、キャデラックの台の高さと同じに変更されているため、キャデラックの横に並べて使うことも可能になっています。
ワンダチェアのような、椅子としての機能はなくなってしまいましたが、「チェア」という名前はそのまま残っています。
現在、多くのピラティススタジオで見かけることができるチェアはこのタイプです。
ピラティスチェアのメリット、デメリット
ピラティスチェアの効果やメリット
- 全身の効果的なトレーニング
- 姿勢改善にも効果的
- バランス感覚の向上や
- 柔軟性のアップ
- 高齢者や妊婦にも適応
- 比較的コンパクト
座った状態だけでなく、腕や足で身体を支えた状態で行うものが多く、身体の一部だけでなく、体幹をはじめとする、全身の筋肉を効果的に鍛えることができます。
レッスン後の姿勢や立ち姿、歩いた時のバランスの変化など、日常生活においての効果を実感しやすいのも特徴です。
ストレッチエクササイズもチェアの高さがあることで、床の上で行うストレッチより、より伸ばしやすいポジションで行えるので、身体が硬い人でも効果的に伸ばすことが可能です。
また、横になるのが大変な妊婦や高齢者でも、無理ない姿勢で行えるのも、他のピラティスマシンにはないメリットです。
ピラティスチェアのデメリット
- 扱いが若干、難しい
- 運動強度やポジションの調整が難しい
- ピラティスマシンの中では危険度がナンバーワン
- そのため、どちらかと言えば初心者向きではない
他のピラティスマシンと比べ、以下の点がデメリットです。
- マシンの扱い方とエクササイズのポイントの両方をわかっている必要がある
- チェアの幅や大きさは変えることができないため、身長や体格に合わせた調整は難しい
リフォーマーなどではマシンの動きがエクササイズの動きをアシストしてくれることがありますが、チェアの場合は、マシンの動きはチャレンジになることが大半です。
腕や足などで体重を支えるエクササイズが多いため、比較的、強度が高めなものが多い傾向にあります。
身体とチェアが触れている面積が少なく不安定なことが多く、場合によってはバランスを崩して転倒したり、落下するなどの危険性もあります。台座につまづいたり、スプリングの力で跳ね上がってきたペダルに身体をぶつけたり、といった突発的なアクシデントも少なくないため、注意が必要です。
一見、簡単そうに見える反面、実際はかなり難しいエクササイズが多いので、初めてチャレンジする場合は、インストラクターの適切な指導が必要です。
エクササイズで見るピラティスチェアの魅力
チェアの効果は、
- 全身の効果的なトレーニング
- 姿勢改善にも効果的
- バランス感覚の向上
などですが、その他にもエクササイズの補完と統合、つまり他のピラティスマシンの足りないところを助けてくれて、うまくまとめてくれる役割を持っています。
実際に例を挙げて見てみましょう。
デッドバグス/フィーマーアーク/レッグリフト
ピラティスの流派や団体によって、エクササイズの呼び方やバリエーションに違いがありますが、「胴体、体幹部を安定させた状態で太ももから下を動かす」=「股関節の分離した動き」のエクササイズです。
マットピラティスでの仰向け
Pilates – DEAD BUG Workout
仰向けでのマットピラティス バージョン
仰向けの姿勢で、足を交互に持ち上げるマットピラティスのエクササイズ。足の重さに負けないように、体幹に意識を向けて、お腹を薄くキープします。
チェアでの座位
Pilates chair. Frog lying flat. Dead bugs. Femur arc.
スプリングがあることで、足を持ち上げることよりも、押し下げることにより意識が必要に。
チェアに座った状態でのバージョン
Seated Double Leg Pumps | Teaching Tip
チェアでの座位バージョン
一見、違う動きに見えますが、やっている事のベースは一緒。座っていることで、より姿勢を保つことが大変になるのと、左右差がわかりやすくなる。
チェアでの立位
ピラティスチェアエクササイズ【スタンディングレッグパンプス】
チェアでの立位バージョン
より、足の裏やバランスを取っている足の意識が必要になる。体幹を安定させた状態で股関節を動かすというベースは変わらず一緒。
チェアの上での立位
Pilates Chair Front Lunges | Leg Toning Workout for Strength & Balance #pilatesstrong
チェアの上での立位バージョン
強度も高く、バランス能力も求められるが、やっている事のベースは一緒。これを知ったうえで、もう一度、最初のバージョンを見ると、エクササイズの意識が変わるかも。
ピラティスチェアと他のマシンでの重要な違いは?
ピラティスには多くの種類のエクササイズがありますが、実は条件を変えながらも、基本的な動きや目的は同じことが多いです。
しかし、基本的な目的は同じでも、チェアと他のマシンでは重要な違いがあります。
- 特定のポイントにフォーカスして行うことが多い
- 特定のポイント以外にも注意を払う
- バランスを取りながら行う必要がある
- 結果として、全身の筋肉を使うことが多い
そのため、
- 全身の効果的なトレーニング
- 姿勢改善
- バランス感覚の向上
これらの特徴が、チェアを使用したピラティスの魅力となっています。
ピラティスチェアの価格(値段)と購入方法
ピラティスチェアの価格は、ブランド、モデルによって大きく異なります。
安価なものであれば10万円弱からありますが、ピラティススタジオなどでも使われている本格的なタイプであれば、目安の金額は以下のようになります。
コンボチェアだと、安いものだと15万円ぐらいから、平均的には30万円~。
エレクトリックハイチェアは、製造しているメーカーが少ないこともあり、40万円~。
- 大きさによっては、送料が高額になる場合も
- 海外から取り寄せる場合は、別途、手数料か関税などが発生することも
- 納品までにかなりの時間がかかることも
メーカーによっては、色をカスタマイズできたり、オプションパーツをつけられるので、自分仕様のチェアにすることも可能です。
国内メーカーの場合は、代金と送料のみで購入できますが、海外メーカーの場合、代理店を通すと翻訳や手配に伴う手数料や、直接注文でも、関税がかかることもあるため、注意が必要です。
→ピラティスマシンの購入方法と種類を紹介!自宅用の折りたたみマシンもあり!
ピラティスチェアを体験してみたいと思ったら?
チェアでのピラティスレッスンが受けられるスタジオ
日本国内で、チェアのグループレッスンをレギュラーで行っているスタジオはあまり多くはありません。そのため、受けるためにはマンツーマンのパーソナルや、少人数でのセミパーソナルでのレッスンがおすすめです。
チェアのレッスンを受けることができるスタジオをいくつかご紹介します。
また、パーソナル中心の個人スタジオではチェアを導入していることが多いため、近所にピラティススタジオがある場合は、確認してみるといいかもしれません。
チェアの指導するためのピラティスインストラクター資格
インストラクターとしてチェアのエクササイズや指導方法を学ぶには、団体によって異なる2つのパターンがあります。
コンプリヘンシブコース
リフォーマー、キャデラック、チェアなど他のマシンも含めた総合的なコースの一部としてチェアを学ぶ。そのため、バレルだけが学べるコースはない。
オプションコース
マットやリフォーマーなどの基礎となる資格を取得した後、段階的な学習のひとつとしてチェアを学ぶオプションのコース。チェア以外のピラティスマシンについても段階的なコースになっていることが多い。オプションを含めた、全てのマシンのコースを取ることで、フル認定(コンプリヘンシブ)になる。
金額や日数など、団体によって大きく異なるため、資格取得を検討している方は各団体に確認することをおすすめします。
ピラティスインストラクター資格を取得したいならこちらをチェック!
>>ピラティスインストラクター資格はどこがいい?種類、選び方、PMA団体をご紹介
ピラティスチェアのまとめ
ピラティスチェアは、コンパクトながら全身の筋肉を効果的に鍛えられるピラティスマシンです。
- 体幹、脚、腕、肩など、全身のトレーニング
- 姿勢改善
- バランス感覚の向上
- 柔軟性アップ
- 高齢者や妊婦などにも適したエクササイズが可能
一方で、扱いが難しい部分があるなど、初心者には適していない面もあります。インストラクターの適切な指導のもとでに使用をおすすめします。
ピラティスに慣れた人にとって、チェアは他のマシンとの相乗効果によって、より総合的なトレーニングを行うことができますよ。
ぜひとも、リフォーマーだけでなく、チェアを含めた様々なピラティスマシンを使ったピラティスで、美しい姿勢や身体作りを目指してみてくださいね。