皆さんはピラティスとはどんなものかご存知でしょうか。
ピラティスとは、簡単に説明するのであればインナーマッスルを鍛えるエクササイズです。
混同されがちなヨガは、ストレッチをしながら精神面の安定を図ることを目的とするもの。
対してピラティスは、体の動きや機能性を高めることを目的としています。
また、いわゆる筋トレのように筋肉量を目に見えて増やすという目的とも一線を画します。
筆者はクラシック・バレエを15年ほど習っており、現在はピラティスのインストラクター業を行っています。
本記事では、ぜひバレエをしている皆さんにピラティスをお勧めしたく筆を取りました。
バレエを習っていて、より体への理解を深めてレッスンに臨みたい方、また過酷な練習で怪我をしてしまった経験のある方、ぜひ本記事をご覧いただきピラティスを学ぶきっかけにしていただければ幸いです。
ピラティスとは?バレエ歴15年の私がピラティスを始めたワケ
まずは序章として、私がピラティスインストラクターを目指した経緯をお話しさせていただきます。
私は普段、ピラティス以外にもデスクワークの仕事や、こういった記事執筆のお仕事もしています。そんな毎日の中で、せっかく長く続けてきたバレエを活かして何か活動的なお仕事をもう1つ増やせないかなと思い出会ったのがピラティスでした。
お客さんとして体験レッスンを受けてみた際、バレエのレッスンで必要不可欠な、「自分の体のどの筋肉をどのように使ってポーズを作るか」を感じる力が遺憾無く発揮されているのを感じ、ぜひ仕事にしたいと感じたのです。
バレエのレッスンを通して自身のインナーマッスルを感じることに慣れている皆さんは、周囲の人よりもピラティスを1歩リードした状態で始めることができる人だと思います。
そしてピラティスを始めることで、バレエにも良い影響を与えることができるのです。
バレエダンサーとピラティスの相性がいい?
最近ピラティスを始めた私は率直に、もっと早く同時に始めてみたかったと感じています。
ダンサーたちが己の体を見直すのにピラティスは大変適していると感じるためです。
なぜバレエとピラティスの相性がいいのか、まず、ピラティスにはリハビリのような側面があるということが挙げられます。
クラシック・バレエは体を酷使するスポーツ。そしてスポーツでありながら、美しさを求める芸術でもあります。
象徴的なトウシューズで踊るダンサーは非常に華麗ですが、その足は豆だらけですし、人間離れした美しさを追求するために、多少の痛みは我慢するのが当然になってしまっているのが現実ではないでしょうか。
そんな無理を押し通すことに慣れてしまっているダンサーたちにこそ、メンテナンスは重要です。
実際に歴史上でも、ダンサーたちとピラティスには根強いつながりがあります。
ピラティスの考案者、ジョセフ・ハベルトゥス・ピラティスは運動療法で自らの病弱な体質の改善に努め、その経験を活かしてトレーナー業や看護師の職につきました。
彼が開発した専用マシンを用いたリハビリ指導は、ニューヨーク・シティ・バレエ団で重用され、怪我や不調を訴えるダンサーたちを復帰に導いたとされているのです。
またピラティスを用いると、クラシック・バレエを踊る上では無視できない問題である『左右差』に気づき、改善させることができます。
多くの人に、より使い勝手の良い体の利きがあるかと思います。
わかりやすい例を挙げると、ピルエットという回転技では如実に得意な方と不得意な方が出やすいのではないでしょうか。
技でなくとも、例えば基本の足ポジション1つをとっても、「右足の方がアンデオールがしやすいな」など、各々左右差があるのかと思います。
加えて、バレエでは片脚を上げるようなポジションでも、体をまっすぐに保とうとする努力が必要になります。
こちらのポジションを参考に見ていきます。
このルティレというポジションでは片足の膝を曲げ、軸足となるもう片方の膝に爪先を軽く触れ合わせるようにします。
特に写真のように両足をアンデオールしてのルティレは、上げている脚のお尻が持ち上がりやすく、それに伴って骨盤もやや引っ張られて斜めになりやすくなります。
このポジションではなるべくこういった傾きをなくし、バランスを取ることが求められるのです。
レッスンの時であれば鏡での確認もできますが、いざ舞台で踊るとなれば話は別。そんな時に求められるのが、自分の筋肉が今どんなふうに使われているか、正しいポジションを作れているか繊細な感覚で覚えることです。
ピラティスでは小さな動きでより深部の筋肉に働きかけるようなエクササイズも多く、そういった感覚を養うことにつながります。
私も実際にピラティスに触れた時、トレーニングを効かせたい部位を想像し、ゆっくりと体を変えていく作業は、クラシック・バレエにおける地味で大変なバーレッスンにとても似ているなと感じました。
お勧めのピラティスエクササイズの紹介
マシンピラティス編
では実際に、バレエダンサーにも挑戦してみてほしいエクササイズをご紹介します。
今回はバレエの命とも言える脚のエクササイズの中から、足関節の強化に焦点を置いてお話をします。
まずお勧めはマシンを使った、カーフレイズというエクササイズです。
マシンの右側に立てたフットバーに母指球と小指球が当たるように足を置きます。足の幅は股関節程度で、向きはパラレルにします。
息を吸いながら踵を下げて、足を背屈していきます。
バレエダンサーたちは普段から踵を押し出して膝を極限まで伸ばすエクササイズをしていますので、膝にグッと力を入れて押し込みがちですが、今回はあくまで足関節が気持ちよく動く範囲で行うことがポイントです。
同時にふくらはぎの腓腹筋の伸展も感じましょう。
次にフットバーを押して、爪先立ちのようにしていきます。バレエダンサーにとっては爪先立ちで足の甲が深い弧を描くようトレーニングすることが日常茶飯事かと思いますが、今回も注目すべきはあくまで足関節やふくらはぎの動きになります。
指先や足首に力を込めすぎないよう意識しましょう。
一番背が高くなるところまで押し出せたら、ゆっくりと踵を下ろして先ほどのように背屈していきます。
コントロールしながらゆっくりと下ろすことで、足関節のコントロールの見直し、強化につながり、ジャンプなどの際の着地で怪我をすることの予防になると考えられます。
こちらのHPの写真でわかりやすく解説されていますのでぜひご参照ください
背中を乗せている「キャリッジ」はバネでマシンとつながっています。このバネの強度を変えて負荷を調節できるのがマシンピラティスの魅力の1つです。
このエクササイズの場合、より強いバネを使って筋力強化を促したり、重さに抗ったコントロールを身につけたりするのも非常に効果的です。
また、同様の姿勢で、単純に膝の曲げ伸ばしを行うフットワークもおすすめです。
簡単すぎて物足りなく感じるかもしれませんが、この単純な動きだからこそ、左右差が見つかることもあります。具体的には、左右の膝の伸びる速度に差が生じることがあるのです。
このような差がある場合、骨盤が傾いているなど何かしらの不具合があるはずなので、基本の姿勢を見直すところから始めてみましょう。
お勧めのピラティスエクササイズの紹介
自宅編
カーフレイズはマシンを使わずに立った状態でも行うことが可能です。
脚を股関節幅に開き、爪先立ちからゆっくりと踵を下す動作を繰り返すことで、同様のエクササイズができます。
まだバランスに自信のないバレエのレッスン初心者の方、より脚に注力したい方は壁に手をついて行うのもおすすめです。
このように壁を使う「ウォールピラティス」には、難易度が高すぎない手軽なエクササイズがたくさんあるのでぜひ下記のページも参考にしてみてくださいね。
参考HP:https://croissant-online.jp/health/222848/
また、バレエのレッスンに通われている方であれば、片足立ちで行うカーフレイズも効果的です。より負荷が増え、バランスを保とうとすることでコントロールも難しくなります。
2項にわたってカーフレイズの方法を書きましたが、非常に地味なトレーニングだという印象を持たれたかと思います。
バレエレッスンに通っている方向けの注意点として、普段のように全力で膝を伸ばすことや、爪先立ちの形にこだわらないということを述べましたが、バレエダンサーがピラティスをする際に重要なのは、いつもやっているような動作を注目する部位を変えて行うことではないかと思います。
つまりピラティスをすることで普段のレッスンで練習をしている技が直接的に上手くなることを狙うのではなく、弱い部分の強化をすることで土台を整えるエクササイズと捉えることが大切なのです。
ピラティス初心者はまず体験してみよう
さて今回は、バレエダンサーに良い影響をもたらすピラティスに関して記しました。
ピラティスにご興味を持った方はぜひ一度体験に行ってみてください。中でも俄然おすすめなのはパーソナルレッスンです。
少しの姿勢の違いでエクササイズの効果が大きく変わってしまいます。まずは丁寧に教えてもらうことで定着を図るのが上達の近道です。
ホットペッパービューティーで検索をかけるとパーソナルピラティスの体験料の相場は4000円〜6000円の程度。 バレエのレッスンに通っている人であれば、毎月1回の頻度でも効果が実感できると思います。
ぜひ有効活用して体をリセットしてみてくださいね。
カーフレイズ参考動画
(4:18〜)
(3:30〜)