「登山でダイエットしたい」とはなかなか考えないかもしれませんが、平坦な道を歩くよりも、登山でダイエットしたほうが効率的と考える方もいるでしょう。
工夫が必要ですが、やり方次第では登山することでダイエット効果が期待できるといわれています。今回は、登山のダイエット効果や痩せるためのポイントなどを解説します。
目次
【結論】やり方次第で、登山はダイエット効果が期待できる
ちょっとした工夫が必要だったりやり方次第だったりしますが、登山することでダイエット効果は期待できます。ここでは消費カロリーや筋力の観点から解説します。
カロリー消費が大きい
登山は、カロリー消費が大きい行動です。おおよその消費カロリーを算出する手段の一つに、「METs(メッツ)」があります。METsとは、安静時を1としたときと比較して、何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示した運動強度の単位です。(参照:e-ヘルスネット)
体重や荷物の重さによって消費カロリーは異なります。仮に、体重60kgの方が1時間登山した場合、消費カロリーは以下のようになります。
METs | 荷物の重さ | 1時間登山した場合の消費カロリー ※小数点以下四捨五入 |
6.3 | 荷物なし | 397kcal |
6.5 | 0〜4.1kg | 410kcal |
7.3 | 4.5〜9.1kg | 460kcal |
8.3 | 9.5〜19.1kg | 523kcal |
9.0 | 19.1kg以上 | 567kcal |
参照:国立健康・栄養研究所|改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』
通常の歩行は、3.5METsとされていて、体重60kgの方が1時間歩いたときの消費カロリーは220kcalです。また、登山中は重たい荷物を持ち歩くことが多いため、通常のウォーキングの場合と比較すると、登山の消費カロリーは2〜2.5倍程度と考えられます。
さらに、登山は登るだけでなく下る必要があります。仮に片道2時間とすると往復で4時間になるため、1度の登山で1,600〜2,200kcal程度を消費することになります。
すなわち、登山はカロリー消費が大きいというより「消費しすぎる」といっても過言ではないでしょう。「やり方次第で」と強調したい理由はここにあります。
筋力がつく
登山道は舗装されているとは限らず、歩きにくくなっている場合が多くあります。そのため、登山中は特に下半身の筋肉に負荷が大きくかかります。
下半身には大きな筋肉が集まっていて、特に使用する代表的な筋肉は以下のとおりです。
- 大腿四頭筋(だいたいしとうきん/前もも)
- 大臀筋(だいでんきん/お尻)
- ハムストリング(後ろもも)
筋肉量を増やすことは、基礎代謝の向上につながります。基礎代謝が向上するとエネルギー消費が効率化され、1日の消費カロリー量の増加も期待できるでしょう。
また、登山は有酸素運動と無酸素運動を同時におこなえます。ダイエットするためにはどちらも組み合わせることが必要と考えられているため、登山はダイエットに向いているといってよいでしょう。
登山でダイエット効果を得るためのポイント
登山で効率よくダイエット効果を得るためには、以下のようなポイントを意識することをおすすめします。
登山を楽しむ
「登山を楽しむこと」基本的なことではありますが、とても大事なことです。黙々と一人で登山することは、精神的にも肉体的にもきついものです。同行者がいて、きついときこそ笑顔でニコニコしながら歩ければ、疲れている中でも最後まで頑張れる気持ちになれるでしょう。
また、効率よく脂肪燃焼させるためには、一定の心拍数を維持しながらの有酸素運動がよいとされています。具体的には、「最大心拍数(220-年齢)×40~60%」が望ましいとされています。
※最大心拍数:心臓にかかる負荷が最大のときに、心臓が動ける1分あたりの心拍数の最大数値
もし30歳の方であれば、76〜114あたりの心拍数をキープできると効率よく脂肪燃焼できるでしょう。最近は心拍数を測れるスマートウォッチがリーズナブルな価格で購入できるため、計測しながら歩くのがおすすめです。
ダイエット向きの山を選ぶ
ダイエット目的で登山するのであれば、山選びが重要です。具体的には、ほんの少しの傾斜と標高が低い山(1,000m以下)がおすすめです。具体例を挙げると、以下のとおりです。
山の名称 | 標高 |
高尾山(東京都八王子市) | 599m |
筑波山(茨城県つくば市) | 877m |
摩耶山(兵庫県神戸市) | 702m |
生駒山(奈良県生駒市・大阪府東大阪市) | 642m |
たとえば、富士山や北岳など標高が高く傾斜もある山への登山はおすすめできません。精神的にも肉体的にも、疲労困憊になってしまうことが予想できます。ダイエット効果よりも、リスクのほうが高いでしょう。
理想は、ゆるい傾斜が長く続き、休まず長時間歩き続けられる山です。心拍数も脂肪燃焼にちょうどいい数値をキープしやすいでしょう。もし該当する山が近くにない場合は、場所に合わせてペースを調整して、笑顔で登山を楽しみましょう。
人通りがあり、リカバリーできる山を選ぶ
いかにダイエット向きの山で登山しようとしても、人によって体力の差があります。仮に複数人で登山する場合でも、自分のペースで登っていくのが理想です。
一人になったときでも道に迷わないようにするため、人通りがあってリカバリーできる山を選びましょう。
たとえば、登山道とは別にケーブルカーやロープウェイが整備されていると、万が一のときでも下山できます。また、登りだけを繰り返すことも可能のため、ダイエットが効率的におこなえる可能性が高くなります。
登山中の食事を調整する
登山はカロリー消費が多いため、何も食べずに登山するのは危険な行為となります。そのため、登山中の食事をどうするか考えることはとても重要です。
真っ先に必要なのは、吸収が早くエネルギー源となる糖質です。おにぎりやバナナ、チョコレートは大事な食料源として持ち歩きましょう。
ダイエット目的の登山であれば、普段の食事量を基本とします。ただし、食べやすいサイズにして、歩いている最中にパクパクとこまめに食べるようにします。糖質は体内の貯蔵量が決まっているので、枯渇しないようにするためにも少しずつ食べるのが重要です。
もし、下山してから体調が悪くなり疲労を強く感じる場合には、しっかりと栄養補給しましょう。たくさん食べる必要はなく、おにぎり1個程度でも十分でしょう。
ダイエット目的で登山する場合の注意点
登山がダイエットに向いているとしても、注意しないといけないことはあります。以下では、ダイエット目的で登山する場合の注意点を解説します。
決して無理してはいけない
登山はカロリー消費が大きく、肉体的にも精神的にも疲労を感じやすい行為といえます。そのため、決して無理してはいけません。自分の体重や体力、年齢などに見合う山を選んで登山しましょう。
登るのがやっとの限界ギリギリの山を選ぶ必要はありません。傾斜がゆるくゆっくり登山する場合でも、十分ダイエット効果が期待できます。登山は「無理しない」が大前提にあるといっても過言ではないでしょう。
危険と隣り合わせ
登山は危険と隣り合わせです。令和4年の全国の山岳遭難事故については、以下のとおりとなっています。
発生件数 | 3,105件 (前年対比+380件) |
遭難者 | 3,506人(前年対比+431人) ※うち死者・行方不明者327人(前年比+44人) |
負傷者 | 1,306人(前年比+149人) |
無事救助 | 1,873人(前年比+238人) |
このデータからすると、遭難者の10人に1人は死亡または行方不明となっていることがわかります。また、遭難者の約8割が登山者とされていて、しっかりした準備や知識がないまま登山している可能性が考えられます。
遭難する気持ちで登山する方はいないでしょうが、現実的に遭難事故は増えているので注意しましょう。
「無理しない」を条件に、工夫次第でダイエットもできる!
消費カロリーが大きく、筋肉も鍛えられる登山は効率よくダイエットできる手段の一つといえます。
ただし、登山に関する知識が不十分であったり、準備不足のまま登山をおこなうことはおすすめできません。登山は同じ有酸素運動であっても、ウォーキングやランニングとは別物だと考えたほうがよいでしょう。
特に食事面で工夫しないと、エネルギー不足でフラフラになってしまう危険性もあります。
いかにダイエット目的で標高が低い山に登るにしても、無理しないことを条件に工夫して登山すれば、ダイエット効果も期待できるでしょう。今回の記事を参考にして、ニコニコしながら自分のペースで登山ダイエットを楽しんでください。