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なぜヨガ哲学を学ぶべきなのか?【ヨガインストラクターになった私#05】

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ヨガ哲学の授業が始まる

「わくわく」です。それしかありませんでした。

ヨガアーサナ(ヨガの体操)のクラスは苦手で、授業で教わったことを自分で練習したり、ポーズの絵を書いてポイントをまとめたりしながら自分のものとなるよう努力はしていましたが、色々ありすぎたせいかその時期は楽しめなかったというのが事実です。

しかしながら、ヨガ哲学は違います。私はヨガスクールに入ると決まった頃から、ヨガ哲学やアーユルヴェーダ(インドの伝統医学)に関する参考文献を既に読んでいたぐらいでしたから。

みんなの様子がおかしい

私たちの教室はヨガスタジオだったので、机と椅子はありませんでした、代わりにヨガマット、ブランケットを床に敷いて座り、ヨガブロックやボルスター(長さ1m弱、楕円形をした硬めのクッション)を机のように設置して授業の準備をする必要がありました。

私はテキストや参考文献、ノートの準備をして先生が来られるのを待っていました。

他のクラスメイトのみんなも授業の準備はしているものの、座って待っているのは私を含めて3名ほどで、その他のみんなはヨガマットの上に両肘をついて腹這いでいたり、寝てしまっている方もいました。

その様子を見るとヨガアーサナのクラスの時のような勢いはなく、あまり興味がないのだろうと容易に想像がつくような状態でした。

そこに女性の先生が入って来られました。この先生が、私たちが今からヨガ哲学を教えて頂く先生でした。

とても物静かで姿勢も良く表情も穏やかでしたが、ご自身の内側に何か強い芯のようなものを持っておられる印象のある方でした。

先生が声をかけることで、寝ていたクラスメイトも少しずつ起きてきて授業が始まりました。

しかしその状況は、これから授業をして下さる先生に対して失礼にあたるのではないかと思われるような態度でした。

先生は少しも気にしている様子を見せることなく、ゆっくりとした口調でたんたんと話しながら授業を進めていきました。その後もクラスメイトのほとんどが寝ていたり、退屈そうな様子で授業を聞いていたり、そんな毎日が2週間続きました。

それでも先生は毎日表情を変えることなく、安定した声のトーンで静かに授業をされていましたが、1度だけこんなことをお話されました。

「あなたたちにはわかりませんね、どれだけこの授業を続けていくために集中しているかどうかは。」まるで独り言のようにつぶやかれました。

インドで3年暮らしながらヨガ哲学を学び、実践されてきた貴重な経験も含めて私たちに丁寧に教えて下さっていた先生が、そんな穏やかな表情を保ちながらも、ご自身の内側では非常に努力されていたことを知り、私はとても心が痛くなりました。

その時私は、誰もがこのような素晴らしい教えを頂ける機会に恵まれるとは限らない、だから先生との出会いに感謝してこれからも1つ1つ大切に学んでいきたいと強く思っていました。

ヨガの教え

勉強
授業は、ヨガとは何かというテーマからでした。以前にもヨガとは何かについて少し触れさせていただきましたが、この哲学の授業ではもっと深く教わることになりました。

ヨガの教えは、インドの古くから伝わるヴェーダと言われるヒンドゥー教やインド文化の土台となっている生き方、哲学の基礎となる教えを書いた聖典の中にあって、いつも変わらない幸せを得るための大切な教えであり、苦悩を取り除いて本当の自由と幸せを目指す道であるとのことでした。

日本ではおしゃれなエクササイズの1つと捉えやすいヨガですが、良く知られているヨガアーサナ(ヨガの体操)はその1部であり、広い意味でのヨガは、非常に哲学的で人が幸せになるための日常的に実践すべき教えであるとのことでした。

ヨガの教えを実践する際に避けるべきこと

いつもの習慣に流されたり、不調和を生み出すような行為を避けるために守るべき5つの禁戒(ヤマ)があるとのことです。

それぞれ、

①アヒンサー(暴力や殺生をやめ、苦痛を引き起こさないこと)
②サティヤ(嘘をつくのをやめて正直になること)
③アスティーヤ(他人の時間や物を盗まない)
④ブラフマチャリヤ(欲に溺れず、エネルギーを浪費しない)
⑤アパリグラハ(貪らない、物を持ちすぎない、ため込まない)

といった守るべき5つの教えがあるとのことです。

このような教えを長く実践してくことも、ヨガの練習の1つです。

なかなかすぐに身に付くものではないようですが、根気強く継続して練習することで心や身体、思考が少しずつ変化していきます。私もヨガの教えを実践し出してからほんの約4年程度ですが、だんだんと心や身体でわかってくる感覚があります。

個人的な見解になりますが、そういった感覚や禁戒(ヤマ)の教えの1つ、アヒンサーについても少しお話をさせてくださいね。
 

アヒンサーの実践について

朝ヨガ
アヒンサー、これは暴言を吐かない、暴力をふるわない、殺生をしないといった意味も含まれます。

もしあなたが、他人に対して自分の中で何か強い感情に突き動かされ、暴言を吐き、その方を傷つけてしまうような行為をしたとしますね。これをヨガの教えでは、禁戒としてやってはいけないことの1つとしているのです。

こういった行為を起こすことで、実は本来幸せになるべき自分自身を不幸にする行為だから辞めましょうと言っているのです。

その思考の過程はこう考えます。まず自分自身の中に怒りや攻撃性などの感情を生み出し、そういった感情をのせた強い言葉を作り相手に発言して一気に攻撃する。

そういったことが、その時は自分の言いたいことを言って、相手を負かしたようで気分が良いかもしれません。

しかしながら、実はその怒りや攻撃を最も受けて傷ついているのは、その感情や思い、言葉を作り出して発言した自分自身だということなのです。

その行為によって、最も自分自身が傷つけられ、自分の中に不調和が生まれるということなのです。

人は幸せになるために生まれてきているので、そういった自分自身を傷つけたり不幸にしたりするようなことは、智慧を持つことで避けること、そして調和を保つべきだとする教えなのです。

私も約4年前は、お恥ずかしい話ですが家族内でも職場でも人間関係の悪化、揉め事も多く、家庭ではささいな喧嘩を繰り返し暴言を吐くこともありました。

いつもざわざわとして落ち着かず、職場でも心が安定せず、何かに怯えていたようにも思います。

しかしながらこのアヒンサーの教えを実践していくと、失敗や反省ももちろんたくさんありましたが、自分自身の中に少しずつ穏やかさや平和な感覚が満ちてくることを感じられるようになりました。

これには練習が必要です。

今も怒りのような感情が起こることもあります。でもそんな時は、大切な自分自身を守り調和を保つために、可能であれば敢えてその場から離れるようにしています。

自分の中にもう1人の自分がいて、この心の傾向に気づいて流されそうになったら強い意志で行動して切り替える、それもヨガの練習ですし、何度も何度も繰り返し練習することで、だんだんと自分自身を含めた環境が平和になり、ヨガとともに生きていくための心の準備が出来ていくのではないでしょうか?

今はやっと、そんな風に思えるようになってきました。

またこの言葉には、殺生をしないという意味もあります。ヨガのポーズには、木のポーズや犬のポーズなどの植物や動物も、人間の仲間とする思いを持って丁寧に練習をしていくので、不思議と私はヨガを始めてから以前よりも自然や植物、動物をとても愛するようになりました。

お釈迦様のお話の中にも、森の中で人と動物、植物が皆仲良く暮らしていて、動物たちはお腹がすいているときにしか獲物を殺さず、それ以外の時は牛や虎さえも仲良く水を飲んでいた。

お釈迦様はそういった行いを尊く思い、アヒンサーを実践されていったとのことです。とても優しく穏やかなことと感じています。

ヨガの教えを実践する際に勧んでするべきこと

また、ヨガの道を歩いていくとき、いつも心にとめて勧んで行うべき5つの教え、ニヤマ(勧戒)についても教わりました。

その5つとは、

① シャウチャ(身の周りを清潔にして心も頭の中もすっきりとさせておくこと)
② サントーシャ(与えられている環境に感謝し、学ぶ姿勢を持っていること)
③ タパス(規則正しい生活をすること)
④ スヴァディヤーヤ(自分自身について知っていくための学びを続けていくこと)
⑤ イーシュヴァラ・プラニダーナ(自然の摂理を知りゆだね、調和的に生きること)

これらを実践することが勧められています。

シャウチャ(自分自身や自分の周りを清潔にすること)の実践について

そうは言っても、ヤマ(禁戒)やニヤマ(勧戒)、やってはいけないこと、やった方がいいこと、色々と制約があって私はその当時そういった教えに対してとても窮屈に感じていました。

そのため、授業で教わったことを少しずつでも実践してみようと思いましたが、実際には日常生活の中でこれらの教えを毎日継続していくことはとても難しかったのです。

特にこれまでの私は、共稼ぎ、子育て、家事といくつもの立場をもって忙しく生活していたこと、お仕事を辞めてからも心の病気であったためかいつも疲労困憊していたからです。

なかなか進んでやってみようとする力や持久力はありませんでした。掃除は週に1回、洗濯は毎日必要だからしていた、そんな感じで家の中はいつも整っておらず、急に人が家に来るとなるとパニックでした。

このようにその当時は、学んだことを実践し自分の感覚として得ることは到底出来ませんでした。

ところが、卒業後に大きな変化がありました。

私の場合は身体を動かすことが、ヨガの道を歩き出す始まりだったのです。

それは先にもお話をさせて頂いておりましたが、卒業後ヨガインストラクターになるはずの私でしたが、ヨガアーサナのクラスで、ヨガのポーズがほとんど出来なかったため自信が無く、その後、様々なヨガスタジオに通い多くの先生方に教えを頂きました。

時間はかかりましたが、上達のための長い道のりやそれぞれの先生方の厳しさも感じながら、少しずつ心と身体を整えていきました。そうするとその時間の経過とともに、自然と自分の心と身体が穏やかになって、体調も良くなり体力も回復していきました。

そこでやっと大きな変化が生まれたのです。

いつも自分の心と身体を丁寧に扱いながらヨガのポーズの練習をしていると、今度は自分の身の周りが汚いということが本当に嫌になり、自分自身そのもの、着ているもの、生きている環境も全て、いつも綺麗に心地良くしていたいという気持ちが強くなっていったのです。

今では毎朝窓を開けて、家中に新しい空気を行き渡らせながら、お掃除をすることが私の日課になっています。今振り返るとびっくりしますし、別人のようになっています。

食事もこれまであまり凝ったことはせず、お腹が一杯になればいいと思う程度でしたが、今ではお料理はあまり得意な方ではありませんが、季節の果物や野菜などを使って、自分なりに丁寧に自分自身や家族の心や身体が喜ぶものをと思いながら毎日のごはんを作っています。

今思うことは、おそらくヨガ哲学を学ぶことなくヨガアーサナ(ヨガの体操)だけを学んで練習をしているだけでは、ここまでの変化は無かったと思いますし、1つのおしゃれなスポーツとしてのヨガでしか無かったと思います。

私は、ヨガ哲学の良き先生に出会えたこと、その知識を頂けたことをとても幸運に思っています。

また、そういった哲学を大切にして日々ヨガの練習をしていくことで、自分自身と周りの環境や自然と調和して暮らしていくことが出来るのではないでしょうか。

いつも平和を感じながら、智慧を以て静けさの中で生きていく、そんなヨガの道を歩いていけるのではないかと思っています。

さて、次回はいよいよアーユルヴェーダ(インドの伝統医学)の授業となります。スクールカリキュラムの後半に入っていきます。卒業まで見届けてくださいね。

幸せを願って。

Kou
Kou
<経歴>
4年制大学を卒業後、会社員となるが、数年後、理学療法士を目指して、専門学校に通い理学療法士となる。その後、手術後から慢性期、在宅ケアまで、リハビリテーション全般を経験する。
その後、体調不良となり、一度、理学療法士を辞めて、ヨガインストラクター養成校に通い、ヨガインストラクターとして活動を開始する。
現在は、主にヨガインストラクターと理学療法士、ライターとして活動している。1男の母。

<資格>
理学療法士
RYT200ヨガインストラクター

<得意なテーマ>
①理学療法士として
主に整形外科的な肩こり、腰痛、膝痛などの痛みに対しての治療が得意で好きな治療分野です。身体の捻じれや姿勢不良などに対して、骨格や骨盤矯正、姿勢を整えて痛みの緩和 や改善を目指す治療を行っております。

②ヨガインストラクターとして
ハタヨガを中心に行っております。理学療法士としてのスキルも活かせるものが得意だと 個人的には思っております。そのため、肩こり改善、腰痛改善ヨガや骨盤矯正ヨガなどの体調不良や姿勢改善のためのヨガを得意としております。
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