今回は、訪問爪切りサービスとともに、看護師や介護従事者向けに専門的な爪ケア技術を教える養成講座を行なっている「つめトピア」を主宰する爪の専門家・小磯麻有さんにインタビュー!
全国に700万人いると言われる「爪難民」を救うための活動をはじめたきっかけ、現在の事業内容、今後のビジョンについてお話をうかがいました。
インタビュアー 早川 諒
株式会社MAJOLI 取締役COO
一般社団法人 国際ヨガアカデミー協会 理事
一般社団法人 国際ピラティス協会 理事
他、7社経営
当メディア”Wellness Story”のコンセプト設計から企画、運営をプロデュース。
ヨガ/ピラティススクールの経営や、ピラティススタジオの経営企画・出店・マーケティングを直営店とフランチャイズの両事業にて行う。
ウェルネス商品の製作販売もEC展開にて拡大し、インストラクター求人サイトで人材キャリアの支援行うなど様々な形でウェルネス事業を経営する。
2023年、著書「最強のひと言」を出版。
「爪の専門家」として2つの事業を進める

早川
まずは読者の皆様に向けて簡単な自己紹介からお願いできますでしょうか。

麻有さん
はじめまして。爪の専門家、小磯麻有と申します。私はもともとネイリスト出身でして、最初は美容関係のサロンで働いていたのですが、あるお一人のおじいちゃんとの出会いをきっかけに、現在はオシャレといったことではなく、ご自身で足の爪が切れない、触れないといった方々の爪のサポートをしております。また、医療者の方や介護従事者向けに、爪切り技術者の育成も行っています。

早川
麻有さんは爪の専門家ということですが、今、ご紹介の中にもありましたが、具体的にどのような事業をなさっているのか、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。

麻有さん
はい。具体的には、「つめトピア」という名前で事業を展開しています。この「つめトピア」の中には2つの事業がありまして、1つは医療機関と連携しながら訪問型で爪切りを行うサービスです。もう1つは、医療者や介護従事者向けに、厚い爪や変形している爪などの切り方、生活の中でトラブルなく過ごせるようにケアするのか、その方法を伝える養成講座を行っています。


早川
訪問サービスと養成講座の事業をされているのですね。その訪問サービスに関してですが、対象者としてはどのような方が多いのでしょうか?

麻有さん
多くは高齢者の方になります。なぜかと申しますと、高齢になると視力や握力が低下し、ご自身で屈むことが難しくなるためです。それによって爪切りができなくなってしまう方が多いので、そういった方々へ訪問しているのがほとんどです。また、若い方でも股関節のトラブルや、片麻痺の影響からご自身での爪切り動作が難しくなり、サポートさせていただくケースもございます。

早川
では、もう一方の養成講座に関しては、どのような方が学びにこられているのでしょうか?

麻有さん
はい。現在は看護師さんがメインで多くいらっしゃいます。もちろん介護従事者の方もいらっしゃるのですが、実際に医療や介護の現場で働いている方々が、利用者さんや患者さんの爪切りに苦戦している、という状況があります。といいますのも、爪といっても非常に厚かったり、巻いていたり、変形していたりする方がたくさんいらっしゃるので、そういった方々の爪をきちんと切ってあげたい、守ってあげたいという思いのある方が受講されるケースが多いですね。

誰もがなりうる「爪難民」という社会課題

早川
医療や介護の現場では、そのような課題があったのですね…!一般的な方、特にまだお若い方ですと、「爪で困っている方がそんなにいるんだ」という実感が湧きにくいかと思うのですが、実際に日本にはどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

麻有さん
私たちは、爪で困っている方々のことを「爪難民」と呼んでおりまして、その数は全国で700万人もいると言われています。この「爪難民」がどういう方々を指すかと申しますと、ご自身で爪が切れないという方はもちろん、切れない上に頼れる先がなくて困っている方、誰に声をかけていいか分からないという方々です。それがご本人のケースもあれば、ご家族や施設で働くスタッフの方など、サポートする側もどうしていいか分からない、そういった方々も含めて「爪難民」と定義しております。

早川
「爪難民」の方はそんなにたくさんいらっしゃるのですね…。ですが、私たちも近い将来にはそうなるかもしれませんし、他人事ではありませんね。今後、高齢化が進んでいくことを考えると、この「爪難民」の数は、このままだとさらに増えていくという予測もあるのでしょうか?

麻有さん
そうですね。そもそも人に爪を切ってもらうということ自体に、皆さんあまり慣れていないのではないかと感じています。そのことにご本人も、そしてサポートする側の方々も気づいていかないと、状況は変わりません。そうなると、これから高齢化が進んでいく中で、「爪難民」の方々はどんどん多くなっていくと予測しています。
技術者育成に懸ける想いとは?

早川
なるほど…。本当に、これだけ「爪難民」の方がいらっしゃるとなると、爪に対する意識を多くの方に知っていただくことが大切になりますし、そういった技術を持つ方の養成も、今後ますます必要になってきますね。この養成講座は、どのようなきっかけで始められたのでしょうか?

麻有さん
「つめトピア」を立ち上げたのは、全国に700万人いる「爪難民」の方々を減らしたい、救いたいというビジョンがあったからです。それを叶えるためにスタートしたのですが、先ほど申し上げたような大きな壁もありましたし、告知や広報といった面でも、なかなか認知が広がるまでに時間がかかると感じていました。

麻有さん
実際に現場に出ると、「待っていました」と待ち望んでくださる方にとっては良いサービスとして受け入れていただけるのですが、その手前の壁によってケアを受けられないケースも存在していました。そうなると、私たちだけでは手が足りません。そこで、サービスを提供するだけでなく、技術を持つ人材を現場に増やすことで、その壁を取り払い、実際に困っている方々のケアに繋がるのではないかと考えました。ですので、技術者を育成することも、「爪難民」を減らすための一つの手段だと考え、養成講座の展開を早めてスタートさせたという背景があります。


早川
そのような事情で養成講座も始められたのですね。では、その養成講座は具体的にどのような方に受けてほしい、あるいは、どのような方に役立つ技術だとお考えですか?

麻有さん
まずメインとして考えているのは看護師さんです。もちろん介護従事者の方も歓迎しているのですが、医療の現場や資格の範囲内で最も多く様々な爪に触れるのが看護師さんだからです。そのため、看護師の方にぜひ受けていただきたいと考えています。また、現場で働く方はもちろんですが、看護師さんには本当に色々な働き方があります。

麻有さん
新しいキャリア形成を望んでいる方、隙間時間を活用したい方、あるいはこれまで医療機関で働いていたけれど、もう少し自分の強みを作りたい、と考えている方もいらっしゃるでしょう。そういった方々のスキルアップという形で、この爪ケア技術者養成講座がお手伝いできるのではないかと考えております。

早川
なるほど。そうしますと、例えば爪の技術を習得することで、副業として爪ケアをしたり、独立したり、あるいは現在の仕事に活かしたりと、色々な可能性が広がるということですね。

麻有さん
おっしゃる通りです。看護師という資格を活かしながらの働き方や、ケアの寄り添い方は本当に多様にあると考えています。

看護師の新たなキャリア形成にも

早川
ちなみに、具体的にはどのような内容が学べるのでしょうか?カリキュラムなどについても教えていただけますか?

麻有さん
特色は2つありまして、メインの特色は、ハイリスクなケースにも触れながら技術を学んでいくという点です。ここでいうハイリスクとは、足の爪が体重を支える重要な器官であり、皮膚など体の一部に付随していることを指します。そのため、利用者さんや患者さんそれぞれの既往歴によって注意の仕方がすごく変わってきますし、しっかりと見ていかなくてはならない部分があります。そういったハイリスクな点について理論講座として用意しているのが、まず1つ目の特色です。この講座は、医療アドバイザーであり、実際に爪ケア外来などで関わっている看護師が提供しています。


麻有さん
もう1つの特色は、私自身がネイリスト出身であるという点です。爪を触る技術や見方といった技術的な部分は、自負しております。トラブルがある爪に関しても5000人以上の症例経験がありますので、そういった様々な爪の生え方や見方も、これまでの経験を基にしたオリジナルのテキストを用意し、安心・安全に、そしてしっかりと見極めながら技術を伝えられるような講座内容になっています。

早川
ステップごとに専門的に学んでいけるというのは、これから学びたい方にとってはすごく良いですね…!

麻有さん
そうですね。また、技術的な部分はどうしても、現場に出た時に「習ったけれど実際はどうなんだろう」と迷ったり躊躇してしまったりする方もいらっしゃいます。そのため、学び直しの機会としても「つめトピア」を活用いただけますし、そういった方も歓迎しています。また、卒業後も技術者同士が連携し合えるコミュニティを作っていますので、安心して学んでいただける環境になっています。

早川
素晴らしい環境ですね!では、最後の質問になりますが、改めて麻有さんのこれからのビジョンや展望についてお聞かせください。

麻有さん
今の時点では、爪のケアや足の爪切りは、どうしても後回しにされがちな社会課題であると実感しています。しかし、ここは皆さんの「歩く」を支える大切な部分であり、「つめトピア」の事業自体が、足元から健康を支える事業だと私たちは考えています。

麻有さん
ですので、現在のシニアの方はもちろん、これからシニアになる方々も、80歳になっても20本の爪が健康で衛生的であり、いつまでも元気に歩き続けられる、そういった健康維持ができる世の中を目指しています。その中でも、体のトラブルで爪のトラブルが出てくることもありますので、「爪のことで本当に困ったら“つめトピア”」と、皆さんに連想していただけるような、そんな頼れる存在になることを目指していきたいと考えております。