今回は、ピラティススタジオ「Lotus Flower」代表で、ピラティス業界のさらなる普及とクオリティアップに務める海川ひとみさんにインタビューしました!
ハワイへの移住経験から感じた日本とアメリカとの文化の違いや、コロナ禍での独立における苦労、ピラティスのスタジオ運営や選ばれるインストラクターについてお話を伺いました。
海川 ひとみのプロフィール
一般社団法人 日本ピラティスヨガフリーランス協会代表理事
ピラティススタジオ Lotus Flower 代表
全国ピラティスランキング1位を獲得。10代の頃からタレント活動を行い、メインパーソナリティの冠番組を8年担当する。
スクウェア・エニックス「DSではじめるティップネスのヨガ」等多くのTVCMや番組に出演。芸能界引退後、ハワイでの育児と起業を経て、体調不良をきっかけにピラティスと出会う。その効果に感動しインストラクターに転身。
「ただの運動」では終わらせないをテーマに、ピラティスインストラクター養成講座を主催。現在は満席続きの人気講座として運営中。
横幕 真理のプロフィール
株式会社MAJOLI代表取締役
幼少期より太っている自分への強いコンプレックスから、無理なダイエットを繰り返す「万年ダイエッター」だったが、ピラティスとヨガに出会い、無理なく自然に理想のスタイルへ変化。カラダとココロを整えることで人生まで大きく変わり、「新しい自分」に出会う経験をする。
29歳で株式会社MAJOLIを設立し、これまでに累計4,000名以上の卒業生を輩出(2025年1月現在)
アメリカ・ラスベガスでピラティスを学び、独自のカリキュラムを加えた1日5分でどこでも実践できる「ちょこっとピラティス(通称ちょこピラ)」を開発。「自然に、しなやかに美しくなる」メソッドを忙しい現代人に提案し、多くの支持を集めている。
2025年2月3日発売!新刊「ちょこっとピラティス」
ピラティス業界の発展に貢献したい思いで活動

真理
まずは、現在の活動内容について教えていただけますでしょうか。

海川さん
現在はピラティススタジオ「Lotus Flower」を運営しております。また、インストラクターの育成や協会の活動などを通じて、多方面からピラティス業界の発展に貢献できるよう取り組んでいます。

真理
様々な活動をされているのですね。その中でも特に力を入れていることは何ですか?

海川さん
インストラクターの育成には特に力を注いでいます。

真理
インストラクターの育成ですか!実は、個人的に協会の活動にもすごく興味があります。と言いますのも、私たちのスタジオの卒業生の中にも、フリーで活動したいけれど、具体的にどうすれば良いか分からず悩んでいる方が多くいらっしゃるんです。そのあたりのお話も詳しくお聞かせいただけますか?

海川さん
最近はフリーランスで活動される方が非常に増えたという印象があります。そうした方々と向き合う中で、皆さんが様々なことで悩みを抱え、その解決方法まで見つけられていない方がとても多いことに気づきました。フリーランスの方は、仲間がいても基本的には一人で看板を背負って活動されているため、最新情報や業界の動向を得る機会が限られている点でも課題があります。

真理
なるほど…。確かにフリーランスならではの悩みですよね。

海川さん
はい。そこで、そうした方々の悩みを少しでも解決できる場を作りたいという思いから、協会を設立しました。
ハワイ移住の決断と、そこで得た学び

真理
次に、少し話題は変わりますが、以前、芸能界で活動されていたと伺いました。その後、ハワイに移住されていますが、きっかけは何だったのでしょうか?

海川さん
息子の存在です。息子が通っていた東京の学校の周辺では、公園で少し騒いだだけで怒られてしまうような環境でした。このままでは、息子は「静かにしなければならない」という考えに縛られてしまうのではないかと不安を感じたんです。そんな時、留学でハワイに連れて行ったのですが、その瞬間に「ここだ」と直感しました。

真理
直感があったのですね。

海川さん
はい。一番の理由は「文化の違い」を肌で学べることでした。英語を学ぶ事と共に、「世の中には色々な考え方があるんだよ」ということを、息子に身をもって体験させてあげたいと思ったのです。

真理
なるほど、素晴らしいお考えですね。先生ご自身は、それまでに海外に住まれたご経験は?

海川さん
それが、全くありませんでした。私は日本が大好きで、国内旅行が趣味の、いわゆる「日本ラバー」でしたから(笑)海外に住むなんて、全く考えてもみませんでした。

真理
そうだったのですね!それほどまでに強く、「ここだ」という思いがあったのですね。英語はもともと話せたのですか?

海川さん
いえ、最初は全く話せなかったので、泣いてばかりでした(笑)でも不思議なもので、いざ「話さなければならない」状況になると、話せるようになるものなのだなと実感しました。やればできるものなのだなと、自分でも驚きましたね。

真理
その強い思いがあったからこそですね。ハワイにはどのくらいの期間いらっしゃったのですか?

海川さん
移住していた期間は3年間です。ただ、その前の留学期間なども含めると、5年ほどは行ったり来たりしていました。

真理
息子さんを留学させて、やはり良かったと思われますか?

海川さん
はい、良かったと思います。親である私も多くのことを学ばせてもらいました。例えば、アメリカは⽐較的安全な区域の⾃宅のコンドミニアムでも、⼿前の道は安全だけど、裏の道は昼でも歩かない⽅が良いほど治安が悪かったりします。

真理
えっ…!そうなんですか。

海川さん
はい。そこで、「安全は当たり前ではないんだ」ということを痛感しました。銃社会でもありますしね。日本にいると、気づきにくくなってしまいますが、当たり前だと思っていた日常が、実はとても幸せなことなのだと、改めて感謝するきっかけにもなりました。

真理
本当にそうですよね。
ゼロからの再出発とコロナ禍での独立

真理
その後、日本に戻られてからピラティスの事業を始められたとのことですが、そのきっかけについて教えていただけますか?

海川さん
離婚を機に日本に戻ってきたのですが、それまで培ってきたキャリアが全てリセットされた状態で、何も仕事がありませんでした。求人に応募しても一つも採用されず…。そんな中で、「今の私に何があるだろう」と考えた時、頭に浮かんだのがピラティスでした。

真理
アメリカでもピラティスは続けられていたのですね。

海川さん
はい。もともと大好きでしたし、持病のリハビリも兼ねてずっと続けていました。だから、「この大好きなピラティスをもっと本格的に極めよう」と決心したのです。まずは大手のスタジオに社員として入社して基礎から学び直し、その後、独立しました。ですが、独立したまさにそのタイミングで、世界中がコロナ禍に見舞われてしまいました。

真理
それは…またしても大きな試練でしたね。

海川さん
本当にそう思いました。「どうしよう」と途方に暮れましたが、まずは小さな部屋にリフォーマーを一台だけ置いて、レッスンを始めたんです。すると、コロナ禍だったからこそ、そのスタイルが大変な人気を呼び、オープンしてすぐに満席になりました。たまたま時代のニーズと合致したのだと思います。
日本でのスタジオ運営で直面した「違い」

真理
1店舗目が成功されて、2店舗目はどのくらいの期間でオープンされたのですか?

海川さん
1店舗目ができてから2年目にオープンしました。ただ、一番の課題は従業員のマネジメントでした。アメリカでも飲⾷店経営の経験はありましたが、日本でのマネジメントは全くの別物でした。アメリカでは、皆が自分の意見をはっきりと伝えてくれます。ですが、日本では謙遜や遠慮が美徳とされる文化があるため、本心が見えにくいことがあるのです。

真理
文化の違いは大きいですよね。

海川さん
ええ。相⼿と相談しながら進めた事が、後から、その相⼿に「無理してました。」と⾔われる事も多くありました。私は利益だけを追求するのではなく、関わる人みんなが幸せになれる事業にしたいという思いが強いので、そういったことがあると、心が痛む瞬間が多かったです。

真理
そのような困難を、どのように乗り越えられたのでしょうか?

海川さん
「時には理解されないことがあったとしても、自分にできることを精一杯やろう」と、気持ちを切り替えるようにしました。こちらがどんなに想いを持って接しても、相手の気持ちを100%汲み取ることはできませんし、幸せの形は人それぞれですから。全てを満たすことには限界があると、ある意味で悟ったのかもしれません。

真理
すごく分かります。特に最初の頃は、「たくさんある中からうちを選んでくれてありがとう!」という気持ちが強すぎて、家族以上に想いを注いでしまいますよね。

海川さん
そうなんです!でも、今は、相⼿をそっと⾒守りながら愛情を注げるような、そんな自分でありたいと思っています。相手が幸せならそれで良いと、良い意味で手放すことも大切だと学びました。
「内観」を促すことに特化した対面レッスン

真理
そんな先生の強い思いが詰まったスタジオですが、改めてその魅力や特徴について教えていただけますか?

海川さん
はい。私たちのスタジオは少人数制で、お客様一人ひとりに目が行き届く環境を大切にしています。そして、特に「マインドフルネス」、つまり「内観」を促すことに特化しているのが最大の特徴です。今はオンラインでも素晴らしいレッスンが受けられる時代だからこそ、対面でしか得られない価値を提供しなければならないと考えています。

真理
具体的には、どのようなことをされているのでしょうか?

海川さん
私たちが⼼がけているのは、お客様の体のことを誰よりも深く理解することです。その日のコンディションなどを細かく共有し、少し体を動かしていただいただけでも、「今日はアウターマッスルに力が入っていますね」といった変化に気づけるレベルを目指しています。

真理
すごいですね!そこまで見てくださると。

海川さん
そうすると、「どうして分かるんですか?」と驚かれたり、そこから会話に繋がったりします。そこまで細やかに体の状態を把握させていただくことで、よりパーソナルな指導が可能になります。

真理
それはまさに対面ならではの価値ですね。

海川さん
そうなんです。逆に言えば、オンラインという素晴らしい選択肢が増えたからこそ、私たちはそこを徹底的に突き詰めなければならないと思っています。

真理
スタジオ名が「ロータスフラワー(蓮の花)」で、コンセプトも「マインドフルネス」ということで、少しヨガの要素も感じられるのですが。

海川さん
よく言われるのですが、実はヨガのことは全く知らないんです(笑)この名前には、私自身の経験が込められています。心身ともに落ち込んで、お先真っ暗だと感じていた私にとって、ピラティスは一筋の光でした。泥の中から美しい花を咲かせる蓮のように、困難な状況にいる方々にとっての希望の光となれるような、そんな場所にしたいという思いから名付けました。

真理
素敵な由来ですね…。「内観」というコンセプトも、そうした経験から生まれたのですね。

海川さん
はい。アメリカで私が経験したピラティスは、もっとフィジカルな要素が強いものが多かったように思います。でも、日本に戻り、特に体の小さなアジア人の方々を指導する中で、もっと繊細で、内側に意識を向けるアプローチが必要だと感じました。それが、今のスタジオのスタイルに繋がっています。
インストラクターとして大切にしていること

真理
指導する上で、大切にされていることは何でしょうか?

海川さん
「1回のレッスンで必ず変化を実感していただく」ことにこだわっています。そのためには、やはりマインドフルネスが不可欠です。私がいくら「こうしてください」と伝えても、ご本人が「変わろう」と意識しなければ、体は変わりません。ご自身の内側に意識を向け、体と対話していただく。そのお手伝いをすることに全力を注いでいます。

真理
内観を促すというのは、本当に難しいことですよね。

海川さん
ええ、難しいです。すんなり伝わる方もいれば、なかなか感覚が掴めない方もいらっしゃいます。どうすればより分かりやすくお伝えできるか、日々学びを繰り返しています。

真理
グループとパーソナルでは、指導法も変わってくるかと思いますが、それぞれで意識されていることはありますか?

海川さん
パーソナルレッスンでは、お客様が「自立できる」ことを目標にしています。パーソナルはどうしてもインストラクターに委ねてしまいがちで、「寝ているだけで整えてもらえる」という受け身の姿勢になりやすいです。ですから、私はあえて「ご自身で紐を取って、かけて、押してください」と促します。そうすることで、レッスンで得た感覚を日常生活に結びつけてほしいのです。

真理
なるほど。グループではいかがですか?

海川さん
グループでは、逆に「いかにプライベートレッスンに近づけるか」を追求しています。例えば、レッスンを始める前に、「今日は肩甲骨の内側を意識してみましょう」といった共通のテーマを設定します。実際に触って感覚を確かめてもらい、意識するポイントを明確にしてから動くことで、内観する力が格段に上がります。

真理
それはすごく大事なことですね!
「また会いたい」と思われるインストラクターになるために

真理
「選ばれるインストラクター」とそうでないインストラクターの違いは、どこにあると思われますか?

海川さん
ピラティスのスキルがあることは大前提ですが、その上でやはり「また会いたい」と思っていただけるような人柄が大切だと思います。相手を思いやり、寄り添うことができる。そういった方が、皆さんから支持されているように感じます。

真理
最終的には、やはり人柄なのですね。面接の際には、どのような点を見られているのですか?

海川さん
あえて⾔うなら、「この⽅と⼀緒にいると⼼地いいな」と思えるかどうかを⼤切にしています。そんな温かさや誠実さはお客様にも伝わると感じています。だから、⾔葉や表情の奥にある思いやりの部分を⼤切に⾒させていただいています。

真理
最後に、これからピラティスインストラクターを目指す方や、さらに活躍していきたいと願う方々へ、メッセージをお願いします。

海川さん
今はマシンピラティスがブームになっていますが、その流れにただ乗るのではなく、「なぜ自分はこの仕事をするのか」という軸をしっかりと持つことが大切だと思っています。その上で、どんな場所でも必要とされる人材になるためには、まず「目の前の一人を大切にする」ことなのではないでしょうか。例えば、グループレッスンにお客様が一人しか来なかったとしても、「モチベーションが下がる」と考えるのではなく、「この方のために1時間たっぷり使えるなんて、なんてハッピーなんだろう」と思える。そんなマインドを持つことができれば、その先にはきっと「愛されるインストラクター」としての未来が待っていると、私は信じています。
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